防災の日!面白い避難訓練から見える新時代の防災

皆さんは「防災の日」というものを知っていますか? 9月1日に制定されており、災害に対する認識と対策を深めることが目的となっている防災啓発デーです。毎年この日を中心に、防災週間としてさまざまなイベントが行われています。その中でも最も多く催されているのは「避難訓練」です。

しかし、せっかくの防災の日ですが、避難訓練と聞いて、正直あまり良いイメージを持っていない人の方が大半かなと思います。退屈やマンネリ化という言葉は、避難訓練という言葉とセットでよく耳にします。

ただ、日本全国には、ひと工夫を加えて面白い避難訓練を実施している場所も多くあります。今回は「防災×避難訓練」というテーマで、全国各地の興味深い避難訓練をご紹介していきます。

防災の日!面白い避難訓練から見える新時代の防災

過去の大災害とつながっている防災デー

避難訓練の話に入る前に、さまざまな防災デーについても触れていきます。まず、9月1日の「防災の日」。毎年ニュースなどにもなるので、知っている人も比較的多いかと思います。

「どうして防災の日が9月1日なのか」という由来に関しては諸説ありますが、一番影響を与えたといわれているのが、1923年9月1日に発生し、10万人以上の死者行方不明者を出した「関東大震災」です。この災害を受けて、1960年に制定されました。

この時期は台風の接近・上陸が多いこともあり、「より防災について考えるべき時期だ」という意図も伝わってきます。また、関東大震災が再び起きる可能性が危惧されている昨今ですので、この9月1日という日付は、より私たちに訴えかけてくるものがあります。

そして、最近では「津波防災の日」という日が11月5日に新しく制定されました。2011年のことです。これは1854年11月5日に発生した安政南海地震に由来しています。

この地震は「稲むらの火」という逸話で有名な地震です。たくさんの街を大津波が襲いましたが、紀伊国広村(現在の和歌山県広川町)では、庄屋・濱口梧陵が高台に積まれていた収穫されたばかりの稲わらに火をつけて、暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に導いて命を救ったと言われています。

ちなみに、この11月5日は、2015年に国際連合で行われた会議にて、193カ国満場一致で「世界津波の日」に定められ、津波対策への国際的な意識向上が期待される世界的な日になりました。

こちらも先ほどと同じく、南海トラフ巨大地震が危惧されている中で、非常に大きな意味を持つ日だと思います。私たちはこういった日を活かして、自分たちの心構えを新たにしていく必要があります。

最近では、3月11日を「防災教育と災害伝承の日」にしようとする署名運動の動きなどもあります。東日本大震災も後世に活かすべき大災害です。3月11日は「怖かったね」「大変だったね」で終わらずに、慰霊の意味も込めながらも、今後は「防災教育に力を入れる日」にシフトしていくことが望まれています。

新しい避難訓練のスタイルで

さて、冒頭でも述べたように、このような防災に関する日に合わせて、よく催されているのが避難訓練です。いざという時にスムーズに判断や行動を取っていくために、非常に重要なトレーニングの一つと考えられています。

とはいえ、多くの人にとっては“やらされている感”は否めず、私も10代の頃は嫌いな行事の一つとして認識していました。「先生たちも面倒くさそうにダラダラやっているし、何の意味があるんだろう」というような、当時の記憶はその程度です。

しかし、そういった退屈な避難訓練がより私たちの心に良い形で残るよう、工夫を凝らした取り組みが全国的に行われ始めています。今回は3つの事例を紹介していきます。

事例①  次世代型! GPSを使った避難訓練

愛知県南知多町で出会った避難訓練です。知多半島は海に囲まれた場所で、津波が到達するまでの猶予が非常に短いと予測されています。そんな中で、迅速かつ効率的な避難が求められるわけですが、なんとこちらでは大学や企業がコラボレーションする形で、GPSなどのテクノロジーを活かした避難訓練が行われているのです。

海岸から公民館までのルートを避難する参加者を、GPSや定点カメラによって追跡。そのデータを集めることで、避難スピードはどうだったか、混雑による滞留がどこで発生したのか、今後の課題などを見出すことができます。「混雑箇所を減らすために避難ルートを分散させる誘導が必要であること」などに気付けたり、普通に行う避難訓練よりも圧倒的に効果があることは明らかです。ゲーム感覚に近い面白さもあるので、高齢者しか参加しない地域が多い避難訓練において、新たな光を感じられる新時代の避難訓練と言えます。

事例② 景品もある! つながりを大切にした楽しい避難訓練

兵庫県篠山市(現・丹波篠山市)で出会った避難訓練です。日置地区というコミュニティーにおける避難訓練では、避難した先に楽しい時間が待っていました。消火器を使った的当てゲーム。土砂災害対策で必要な土のうに土を入れてぴったりの重さで当てられるかゲーム。細分化された地区ごとのチームで、さまざまなゲームに挑戦していくのです。

そして、避難訓練の最後には、優勝チームに対する表彰や、抽選会などが行われていました。笑顔や拍手が絶えず、「自分の知っている避難訓練じゃない!」「なんだこの温かい避難訓練は!」と驚いたことを今も覚えています。こちらの避難訓練は家族連れなどの参加が多く、高齢者だけというイメージを大きく覆すものでした。こうした防災のハードルを下げる形というのは非常に有意義なものに違いありません。

新しい避難訓練のスタイルで

事例③ 映像という新ツール! 避難した先で待っているのは映画鑑賞会

私は防災ドキュメンタリー映画の監督として、『いつか君の花明かりには』という防災教育作品を製作して、全国各地から依頼をもらって上映しています。この作品を避難訓練と組み合わせて使う主催者が多いのです。実は上記にて紹介した愛知県知多町と兵庫県篠山市も、避難訓練と映画上映を組み合わせて行った地域の一つです。

体育館や公民館など、避難した先には大きなスクリーンがあって、映画を観て、防災の勉強をして帰っていく。普通の避難訓練よりもはるかに印象に残るものになりますし、避難訓練の体験と映画の内容に重なる部分も多いので、防災意識の向上に大きく役立っている声もよくいただきます。

映像という新ツール! 避難した先で待っているのは映画鑑賞会

防災デーを大切に! 新しい時代の防災を作っていく

今回は防災デーと避難訓練についてお話ししました。防災の日がもっと世間に認知され、多くの人がより防災アクションを起こす一日になっていくことを願います。

そして、そんな防災デーに行われることが多い避難訓練。日本全国では今日も、面白い避難訓練も、退屈な避難訓練も、きっと千差万別に行われていることだと思います。そんな中で「何かをかけ合わせる」という方法は重要です。避難訓練に参加してくれる人や面白さを感じてくれる人が増えます。それが次の避難訓練につながり、やがて、いつか来るかもしれない大災害に活かされていきます。新しいスタイルの避難訓練がどんどん増えて行ったらいいなと切実に思います。

それこそ、ジャクリのポータブル電源を用いた避難訓練も、非常に面白いと思います。避難した先が停電という設定で、そこにある課題をジャクリのポータブル電源で解決する練習をしたり、そういった貴重な電気供給源をどうやって要所に運びながら避難していくかを実践したり、活用方法はいくらでもあると思います。

もし「自分の地域の避難訓練、つまらないんだよなぁ」と思う方は、ジャクリのポータブル電源を活用したり、今回の記事を参考にしたりして、ぜひ避難訓練を面白くするアイデアを発言してみてください。そこから、あなたの地域の防災力が変わっていくかもしれません。

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著者プロフィール

小川光一(おがわこういち)

小川光一(おがわこういち)
1987年東京生まれ。作家、映画監督。

国内外を問わず、防災教育や国際支援を中心に活動。日本唯一の「映画を作ることができる防災専門家」として、全47都道府県で講演実績がある。2016年に執筆した防災対策本『いつ大災害が起きても家族で生き延びる』は日本・韓国の二カ国にて出版されている。日本防災士機構認定防災士/認定NPO法人 桜ライン311理事ほか。現在、著書「太陽のパトロール~親子で一緒に考える防災児童文学~」が発売中。