vol.2 「台湾佐記麺線」キッチンカー オーナー 佐久間政吾

「力を抜く」という独特のスタンスで人気の台湾料理店
キッチンカー出店の条件をクリアし多くの人に家庭の味を提供中

――お昼時、ビルの谷間に設けられた広場や商店街の空きスペースに、キッチンカーが並ぶ光景を目にする機会が多い。それぞれが個性的で趣向を凝らした料理を提供していることもあり、買う側としては目移りしてしまうほどだ。

そんな中で、「台湾佐記麺線」も多くの人たちに愛されているキッチンカーのひとつだ。提供するのは台湾の代表的な麺「麺線(めんせん)」。そうめんのような細麺が特徴の家庭料理で、日本ではとくに女性を中心に人気が高い。このキッチンカーのオーナーが佐久間政吾さん。「台湾佐記麺線」をオープンした経緯やこだわりについて迫った。

(台湾料理店「台湾佐記麺線」のオーナー佐久間政吾さん)

これまでいくつもの職業に就いてきた佐久間さん。前職は海外の航空会社だったこともあり、台湾には何度も訪れていたという。もともと独立心が強く、「何かを立ち上げたい」と思っていた佐久間さんは、退職して台湾の雑貨店を志すも挫折。そんななかで閃いたのが「麺線」だった。

「私は、日本にないものを紹介したいと思っていました。漠然と台湾の雑貨を扱うお店をやろうと思って台湾に行っていろいろと回りました。しかし、ノウハウがなかったりしたため、これはダメだなって結構落ち込んでいたんですね。そんな時、台湾の麺線を知り、麺線って日本にないなと思ったんです」

佐久間さんはもともと料理が好きで、会社員時代は自らお弁当を作っていた。興味のある料理を仕事にすること、日本ではあまり見ない台湾料理の麺線を紹介できること。この2つの理由から、台湾料理店を出店することにした。しかし完全にイチからのスタートだったため、模索の日々が続いた。

「まずYouTubeを見て作り方を覚えました(笑)。それから台湾にまた行って、1日10杯、20杯、食べて……。台北にある麺線屋さんはかなり行きましたね。自分の好きな麺線を見つけて、そこに1日5回とか通いました。それで、この味で行こうと決めたんです」

(キッチンカーでも提供する「ルーローハン」(左)と「麺線」)

2016年に西新宿にお店を立ち上げてから今年で5年目。常連客の一人は「台湾料理が好きで何度も台湾に行っていますが、ここの味は本格的でおいしい」と語るなど、その確かな味から人気店のひとつに数えられるようになった。佐久間さんに味へのこだわりについて聞いてみると、実にユニークな答えが返ってきた。

「作るときは、常に力を抜いています。調味料も含めて、可能な限り家庭にあるのものでご飯を作るのが、お店の原点です。それは、家庭の味だからなんです。そもそも家庭料理は力を入れて作るものではないんですね。手作り感は絶対にとっておきたいし、大事にしておきたいです」

力を入れて作り込もうとしない、この緩めのスタンスが絶妙な家庭の味を作り出し、常連客からは「唯一無二の味」という評価を受けている。そんななかで常連客からリクエストがあったのがキッチンカーだ。現在、「台湾佐記麺線」の味は店舗とキッチンカーで楽しめる。

キッチンカーで提供するのは、「麺線」、とろとろの豚バラをたっぷりとかけた「ルーローハン」、「台湾くるくるおにぎり」、「大根もち」など、お店で人気の厳選メニューだ。ここでもやはり人気は高く、お昼時には列をなすこともある。

(キッチンカーで料理を提供する佐久間さん。特に女性に人気がある)

しかしキッチンカーの出店にあたっては、気を付けなくてはいけないポイントがいくつかある。佐久間さんはその点を語る。

「オフィス街や住宅街など、出店場所によって条件は本当にさまざまですが、まず出店をしている場所を汚さない。ルールは守る。あとは特に住宅街では近所迷惑にならない。これはもう絶対ですね」

さまざまな条件をクリアするなかで、佐久間さんにとってなくてならないアイテムが、ポータブル電源だ。

「まず騒音が発生しないんですね。これは非常に大きいメリットです。今までは、ガソリンを入れるポータブルの発電機を使っていたんですけど、結構ノイズがするんです。自分たちが思っている以上に、住宅街に重低音として聞こえてしまいます。それがまったくないのは、ものすごく大きい利点だと思います」

(キッチンカーではポータブル電源が必須アイテム)

ポータブル電源の利点は、これだけに留まらない。

「もう1点が、現場についてから始業までの時間が早くて、お店で作ったものをすぐに提供できることです。これまでキッチンカーで移動中は保温ジャーの電源を落とした状態だったんです。でもポータブル電源を稼働させたまま、車の中に入れておけば、ずっと保温し続けられる。熱々の状態で開店と同時に提供できる。それはポータブル電源でないとできないことですね。これは使ってみて、一番感動したところです」

さらにイベントなど稼働時間が長い時にも重宝するという。

「一升炊きの炊飯器は1350w必要なんですが、今使っているジャクリのポータブル電源は1500wあるので、お店をやりながら一升を炊けば、追加で20~30食は提供できます。1日中いる現場だと米を炊くことが結構あるので、とても便利です。また大型イベントなどは1店舗の出力が1500wまでなどと上限が決まっています。そんな時はお店が休止中に充電できるので、電気に困ることはまったくないですね」

キッチンカーをやることによって、お店の可能性が大きく広がった佐久間さん。最後に今後の夢について聞いてみた。

「台湾にお店を作りたいです。私は日本で生まれ、日本で育ちましたから、本場の台湾料理を作ることはできないと思っています。ただ台湾の方が作れないところに自分の居場所があると思っています。例えばフランス料理は、フランスに出店した日本人の方が、ミシュランの星をとったりしているんですね。そうやって現地に認められ根付いているんです。台湾でもいずれそんなことができたら、すごく面白いことだと思うんですよね」

お店を立ち上げ、キッチンカーを活用して、屋外でも料理を提供してきた佐久間さん。多くの人に愛される味、そして信頼できるアイテムと、確立したノウハウがあれば、海外出店も決して夢物語ではないはずだ。

佐久間 政吾

1981年、東京都生まれ。骨董商の家庭に育ち、幼少より海外の生活文化や食文化に慣れ親しむ。早稲田大学商学部卒業。北京大学経済学部および同大学漢語学院高級課程修了。豊田通商、タイ料理店ソウルフードバンコク、チャイナエアラインを経て、2015年8月合同会社バルコ設立し、2016年に台湾佐記麺線をオープンした。


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