大切な人との温度差を縮めたい! 1億人に1億通りの防災スイッチがあるという話

このコラムを開いてくださり、誠にありがとうございます。今回は「防災×温度差」がテーマです。日本各地で防災講演の仕事をしていると、さまざまな相談を受けることがあります。おすすめの防災対策を聞かれることが一番多いですが、それと同じくらい話題に上がるのが「温度差」についてです。

「防災に対する考え方で、家族と温度差があり過ぎて困っています」

「職場の防災対策をもっと進めたいのですが、なかなか理解してもらえません」

このような悩みを打ち明けられることがよくあります。家族みんなで同じ温度感を保つなんて、何事においても難しい話ではありますが、とりわけ防災においてはその温度感に大きな隔たりがある場合が多いように感じます。私の周りにも“防災嫌い”の方はたくさんいます。

では、あきらめるしかないのかと言われたら、そうではないと思っています。今回の記事では「温度差の縮め方」について、いくつかの方法をご紹介していきます。

いつか大きな災害が起きてしまった時、「温度差をあきらめなければ良かった」というような後悔は誰にもしてほしくはありません。自分の暮らしの中に温度差を感じることはあるか。あった場合にどうやって縮めていくべきか。身の回りの状況に置き換えながら読み進めてくださればと思います。

防災は「熱く伝えない」

まず、防災の大切さを誰かに伝えたいとして、「熱く伝えない」という手段も持っておくことが非常に重要になります。でも、このような記事を毎月書いている時点で、「あなたこそ熱く伝えちゃってるじゃん」というツッコミが今にも聞こえそうですが、実は私も、普段はうまく使い分けるようにしています。

熱く伝えてちゃんと伝わる人には、思う存分に熱い気持ちをぶつけたらいいと思います。しかし、温度差がある人には、逆効果になる可能性が高いです。自分が興味ないことをしつこく主張して来られたら、皆さんはどう思いますか?

私だったら余計にそのことが嫌いになる気がします。ただただ愚直に伝えて「なんで防災は広まらないんだ」と憤っている人が多い印象があります。相手との温度差をしっかりと見極め、少しずつ温度を引き上げていくというステップを踏むことが大切なのです。

そこで心強い味方になるのが、防災の入り口としてライトなもの。防災を楽しく学べるならば、抵抗感は薄まるというものです。以下に、3つの手段をおすすめしていきます。

温度差を縮めるためにおすすめの3つの方法

①防災ピクニック

まず、1つ目は「防災ピクニックをする」という方法です。ピクニックは多くの人が気軽に行うレジャーの1つですが、防災イベントとして開催している自治体も多くあります。

避難場所までのルートを確認しながら公園に向かい、その場所で非常食を食べるという流れが一般的なもの。その上で、ポータブル電源を公園に持参し、電力の大切さを学ぶ機会を作っている会場もあるかもしれません。また、普通救命講習の講師などを呼んで、あおぞらの下で止血方法を教えている会場もあるかもしれません。主催者が自由にカスタマイズできる点も、防災ピクニックを楽しく思える点です。

そういった意味では、自治体に頼らずに、友人や家族と一緒に自主的に防災ピクニックをしても、非常に有意義だと思います。

ピクニックに出かける際に使うのは、非常用持ち出し袋、防災リュックにしましょう。「意外とこの防災リュック重いな」「子ども用はもっと小さくしなきゃな」など、さまざまな発見があるはずです。

公園までの移動中には、家の周りにどんな危険が潜んでいるかを考えながら歩くと良いと思います。備蓄品を使ったランチをする際には、自分や家族の好みに適した非常食を選べているのかをチェックする機会にもなります。

れっきとしたピクニックなので楽しいですし、その上で自分の備えにもつながります。防災を伝えたい相手を具体的に思い浮かべて、その人の思い出に残るピクニックをぜひ開いてみてください。

ポータブル電源 ピクニック

②防災ボードゲーム

2つ目として「防災ボードゲームを用いる」という方法も、防災のハードルを大きく下げてくれる心強い味方です。さまざまなボードゲームが発売されている昨今ですが、防災をテーマにしたものも多く出回っています。

例えば、災害時に役立つ情報を手順通りに並べ替えていくカードゲーム「シャッフル」があります。トランプの七並べに似ている上に、UNOのような特殊効果カードを活用していくので、初めてプレイする人にも親しみを覚えてもらいやすいゲームです。

また、海外のボードゲームですが、水害などをテーマにした本格的なものもあります。「ローランド」というゲームでは、海抜の低い土地に住む農家となり、水害リスクを考えながら農場経営に励みます。災害時に活きる知恵を学べるわけではないですが、ほかのプレイヤーと協力して堤防を作らなければならないので、「共助の気持ちを育む」という教育的要素に優れたゲームです。

温度差がある友人や家族に対して、防災ボードゲームはかなり効果的です。色々な種類があるので、面白そうなものを1つ入手してみて、ぜひ遊びの選択肢に混ぜてみましょう。

③防災体験館

最後に「防災体験館に一緒に行く」という方法もおすすめします。体感型アトラクションなどのアミューズメント面が充実した防災体験館も増えており、大人も子どもも楽しみながら防災を学ぶことができます。

例えば、富山県広域消防防災センターには、四季防災館という防災体験館が併設されています。こちらでは、円柱のような施設の二階フロアを4つに区切っており、富山県に起こり得る春夏秋冬それぞれの災害を体験することができます。四季を意識した色使いの内観も鮮やかで、楽しむ気持ちを忘れずにいられます。

また、こういった防災体験館は、地域ごとの災害に対して、力を入れている特徴があります。京都市市民防災センターでは、都市型水害について学べる体験コーナーも多く設置されています。地下街浸水の恐ろしさやドア開放の難しさを学べるものや、アンダーパスの浸水の危険性や対処法を学ぶことができます。一方で、徳島県立防災センターでは、南海トラフ巨大地震による津波を想定して、VR津波避難体験などができるようになっています。

皆さんの地域にどんな防災体験館があるか、ぜひ調べてみてください。定期的に防災フェスティバルのようなイベントを開催しているところも多く、時には屋台が立ち並ぶなど、とてもにぎやかな雰囲気になります。そういった日にも合わせながら、ぜひ休日のレジャー候補に入れて欲しいと思います。

1億人に1億通りの防災スイッチ

今回は「温度差」をテーマに、防災が伝わりやすい方法として「ピクニック」「ボードゲーム」「体験館」の3つを紹介しました。しかし、防災を伝える方法は決してこれだけではなく、ほかにもさまざまな方法があります。それこそ、何が響くかなんて人それぞれで、1億人に1億通りのスイッチがあるんだと思います。ぜひ皆さんなりの工夫とアイデアで、大切な人との温度差を縮めていってくだされば幸いです。

仮に1つの方法がダメでも、時間を空けて、また別の方法でチャレンジすることも大切だと思います。私は防災ドキュメンタリー映画を製作して、「映画」という方法で防災を伝えようとしてきました。けれど、映画を観に来てくれなった知人・友人も多くいました。それから「本」も書くようになりましたが、次は「ボードゲーム」にチャレンジしたいと考えています。「この防災コラムシリーズに詰め込んでいるような防災知識が学べるゲーム」を開発できればと考えているので、力を貸してくださる方をこれから探していけたらと思っています。

皆さんもきっと、周囲との温度差に落ち込む瞬間もあると思います。それでも、災害というものはこれからも起こり続けます。大切な人とこれからも生きていくために、色々な方法を用いながら、お互いに頑張っていきましょう。皆さんのコミュニティーでも、少しでも防災が広まっていくことを願っております。


著者プロフィール

小川光一(おがわこういち)
1987年東京生まれ。作家、映画監督。

国内外を問わず、防災教育や国際支援を中心に活動。日本唯一の「映画を作ることができる防災専門家」として、全47都道府県で講演実績がある。2016年に執筆した防災対策本『いつ大災害が起きても家族で生き延びる』は日本・韓国の二カ国にて出版されている。日本防災士機構認定防災士/認定NPO法人 桜ライン311理事ほか。現在、著書「太陽のパトロール~親子で一緒に考える防災児童文学~」が発売中。

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