企業が取り組むべき災害対策5選!BCPや2つの防災義務についても解説

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記憶に新しい「2024年能登半島地震」のように、災害は予期せず突然やってきます。日本は自然災害が多い国で、企業が事業を継続するためには災害対策が欠かせません。従業員の安全確保のためにも、しっかりとした災害対策が必要です。

 

この記事では、企業が取り組むべき災害対策の基本から、法律で定められた防災義務、具体的な対策方法まで徹底解説。具体的な取り組み事例も交えながら、あなたの会社でもすぐに始められる対策をご紹介します。

目次

1.企業の災害対策「BCP(事業継続計画)」とは?

 

企業が災害対策に取り組むうえで、押さえておきたいのが「BCP(事業継続計画)」です。BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害などの緊急事態が発生したときに、事業停止を最小限に抑え早期に復旧するための計画のこと。BCPは単なる「防災計画」ではなく、事業の継続・早期復旧に焦点を当てた計画となります。

企業の災害対策「BCP(事業継続計画)」とは?

引用:中小企業庁「BCP(事業継続計画)とは」 

たとえば、製造業であれば生産ラインの稼働、小売業であれば店舗の営業再開、IT企業であればシステムの稼働などが優先されるでしょう。こうした「コアな業務」を特定したうえで、さまざまな災害シナリオを想定し、対応策を事前に準備しておくのがBCPの基本的な考え方です。BCPを策定することで、災害時の混乱を最小限に抑え、事業の早期復旧が可能になります。

2.従業員の安全を確保!企業の2つの防災義務

 

企業には災害対策において、法律で定められた「防災備蓄義務」と「安全配慮義務」があります。2つの義務を果たすことは、従業員の安全を守るだけでなく、企業としての法的責任を果たすことにもなります。詳しく見ていきましょう。

①防災備蓄義務

「防災備蓄義務」は、災害対策基本法第49条に定められている義務です。企業は災害に備えて必要な物資・資材を備蓄し、定期的に点検・整備しなければいけません。 

参考:e-Gov法令検索「災害対策基本法」 

たとえば東京都の場合は「帰宅困難者対策条例」により、最低でも3日分の備蓄が推奨されています。 

参考:東京都「東京都帰宅困難者対策条例」 

ただし、防災備蓄義務は「義務」であるものの罰則はありません。とはいえ、企業の事業継続のために、しっかりと備蓄をしておくことは欠かせないでしょう。

②安全配慮義務

「安全配慮義務」は、労働契約法第5条に規定されている「従業員の安全を確保し、事故を未然に防ぐ」義務です。 

参考:e-Gov法令検索「労働契約法」 

企業は従業員の安全を確保するために、以下のような対策をしなければいけません。 

災害時の避難経路の確保

避難訓練・危険予知訓練の実施

事業所の耐震化

安全装置の設置 など 

安全配慮義務を怠った場合、災害時に従業員が被害を受けると、企業が損害賠償責任を問われる可能性もあります。実際に過去の裁判では、津波による従業員の死亡について会社の安全配慮義務違反が認められたケースがありました。 

参考:関東弁護士会連合会平成29年度シンポジウム委員会(55ページ)

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3.企業が取り組むべき災害対策5選

 

デバイス充電ここでは企業が取り組むべき災害対策を5つ紹介します。

漏れなく実施して、災害に強い体制を整えましょう。

①防災対策マニュアルの作成

防災対策マニュアルは、災害発生時に企業が取るべき行動や対応を明確にした指針です。以下のポイントに沿って作った適切なマニュアルがあれば、パニック状態でも冷静な判断と行動が可能になります。 

想定する災害の種類(地震、台風、洪水など)ごとに対応を分ける

従業員の役割分担を明確にする

緊急連絡網や安否確認の方法を具体的に記載する

避難経路や避難場所を複数設定する

帰宅困難者対応の手順を決める

定期的な見直しと更新の仕組みを作る 

たとえば、愛知労働局が公開している防災対策マニュアルの例には、事前の備えや発災時の対応、事後の措置など時系列に沿った対応策が詳細に記載されています。 

参考:愛知労働局「防災マニュアル策定の手引き」 

災害時に従業員が素早く確認できるよう、図やフローチャートを活用し視覚的に分かりやすくすることも大切です。マニュアルを作成したら、定期的な訓練で使いやすさを確認しながら、継続的に改善していきましょう。

②防災備蓄リストの作成

災害時に必要な物資を把握し計画的に備蓄するためには、防災備蓄リストの作成が欠かせません。リストがあることで、何をどれだけ備蓄しているかが一目でわかり、管理が容易になります。 

必要な防災備蓄品は企業により異なりますが、最低限以下のものは含めておくべきでしょう。 

飲料水:1人1日3リットル×3日分以上

食料:1人1日3食×3日分以上(非常食、缶詰、レトルト食品など)

衛生用品:トイレットペーパー、ウェットティッシュ、マスク、手指消毒液など

簡易トイレ:1人1日5回×3日分

防寒・暑さ対策用品:毛布、使い捨てカイロ、扇子など

救急用品:絆創膏、消毒液、常備薬、体温計など

情報収集機器:ラジオ、予備バッテリー、充電器など

非常用電源:ポータブル電源、発電機など 

とくに非常用電源はビジネスの継続に不可欠です。スマホやパソコン、照明が使えなければ、まともな企業活動ができません。屋内で使うなら、排気ガスが出ない「ポータブル電源」がおすすめです。 

備蓄リストは単に作成するだけでなく定期的に見直し、従業員数の変動に応じて更新していくことが望ましいでしょう。また、賞味期限がある食料や飲料は、家庭の防災でよく用いられるローリングストック法(日常的に使用し、使った分を補充する方法)を活用して備蓄するのがおすすめです。

③避難経路の確保

発災に備えてスムーズに逃げられる避難経路の確保が必要です。次の点をチェックしておきましょう。 

複数の避難経路を設定し、案内図を見やすい場所に掲示する

避難経路に障害物を置かないよう徹底する

非常口や階段の表示を明確にし、定期的に確認する

避難経路の照明や非常灯の点検を行う 

たとえば建物の倒壊を伴うレベルの大災害の場合、1分1秒の遅れが命を落とすことにつながりかねません。備蓄品とすぐに逃げられる避難経路の確保は、防災対策の基本中の基本です。しっかりと整えて災害時の混乱を最小限に抑え、従業員の安全確保と事業の早期復旧につなげましょう。

④防災訓練の実施

マニュアルや計画を作成しても、実際に行動に移せなければ意味がありません。定期的な防災訓練を通じて、災害時の対応力を高めましょう。防災訓練の種類と内容は以下の通りです。

避難訓練:災害発生を想定し、避難経路を使って避難場所まで実際に移動する

消火訓練:消火器や消火栓の使い方を実践的に学ぶ

救命訓練:AEDの使用方法や心肺蘇生法などの応急処置を学ぶ

安否確認訓練:従業員の安否確認手順を実践する

情報伝達訓練:災害時の連絡手段や情報共有の方法を確認する

机上訓練(図上訓練):災害シナリオに基づいて、被災時の対応を議論する 

訓練を通じて明らかになった課題を一つひとつ解決していくことで、組織の防災力は着実に高まっていきます。繁忙期を避けて、事前に告知せずに実施する「抜き打ち訓練」も取り入れるのも良いでしょう。

⑤BCP(事業継続計画)の策定

災害発生時に迅速に事業を復旧させるためには、事前に明確な計画を立てておくことが欠かせません。BCPは以下の手順で策定します。 

1.基本方針の策定:BCPの目的、適用範囲、基本的な考え方を明確にする

2.事業影響分析:自社のコア業務を特定し、災害による影響を分析する

3.リスク評価:発生しうる災害と、その影響の大きさを評価する

4.事業継続戦略の策定:コア業務を継続・復旧させるための方法や代替手段を検討する

5.事業継続計画の作成:具体的な行動計画を文書化する

6.教育・訓練の実施:従業員にBCPの内容を周知し、訓練を行う

7.点検・見直し:定期的に計画を見直し、改善する 

BCPは一度策定して終わりではなく、定期的な訓練と見直しを通じて継続的に改善していくことが望ましいでしょう。また、BCPの内容は従業員全員に周知し、いざというときにスムーズに実行できる体制を整えることが不可欠です。

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4.【事例】実際の企業の自然災害に向けた防災対策

 

実際の企業がどのような災害対策に取り組んでいるのか、具体的な事例を見ていきましょう。これらの事例は内閣府が公開している「企業の災害対応における事例集」を参考にしています。 

参考:内閣府防災情報のページ「企業の災害対応における事例集」

食品・水産加工事業者の取り組み事例

宮城県石巻市にある株式会社白謙蒲鉾店は、東日本大震災で製造工場と店舗が全て被災した経験から、防災と事業継続の取り組みを強化しました。同社の取り組み例は以下のとおりです。 

人命第一優先の理念を明確化:「安全を配慮したうえで最善をつくす」という考え方を全社で共有

国際規格の取得:ISO22301(事業継続マネジメントシステム)認証を取得

継続的な訓練:年間182回にもおよぶ多様な訓練を実施

事業所の耐震対策:建物の耐震化や設備の転倒防止対策、1週間分の備蓄を実施

サプライチェーンの強化:災害時の代替生産体制の確立や取引先との連携強化 

こうした取り組みにより、同社は災害に強い企業体質を築きました。また、これらの活動が人材育成にもつながる副次的効果も生み出しています。

総合電気設備工事業者の取り組み事例

熊本県熊本市の電気設備工事業者、白鷺電気工業株式会社は、2016年の熊本地震での経験をきっかけに防災対策を強化しました。同社の防災対策の取り組み例は以下のとおり。 

安否確認システムの導入:震度5弱以上の地震発生時に自動的に安否メールが配信されるシステムを採用

耐震性の高い新社屋:震度6強に耐えられる構造や免震付き移動式書棚の導入

非常用設備の充実:非常用発電機の設置や、従業員・家族用の3日分の備蓄品確保

継続的な訓練:自治体訓練への参加や協力会社との安全総点検の実施

資機材のストック:早期復旧のための電線・管などの資材備蓄

広域連携の強化:熊本以外の自治体との機器相互支援体制の確立 

こうした安全・安心への取り組みが評価され、同社は九州電力からの技術力・安全施行等の表彰や、熊本県からの防災センター竣工の感謝状を受けました。災害対策がライフラインを守る企業としての信用を高め、地域からの信頼を得る結果となっています。

情報通信業者の取り組み事例

株式会社広域高速ネット二九六は、千葉県15市町村をサービスエリアとするケーブルテレビ事業者です。同社は「地域密着・災害報道に強い」をビジョンに掲げ、特に2019年の房総半島台風での被災経験を契機に、災害時の情報提供体制を強化しました。同社の災害対策の取り組みは以下のとおりです。 

問題点・課題のピックアップ:被災経験から得た、計117項目もの「気づき」を洗い出して改善

継続的な訓練:全従業員参加型のBCP訓練や安否確認テストを定期的に実施

訓練結果の反映:訓練で得られた「気づき」をBCPに継続的に反映

サプライチェーンとの連携強化:工事施工業者、通信会社、システムベンダーなどとの協力体制構築

地域貢献:自治体や警察との緊急情報提供協定の締結、河川監視カメラの設置など 

同社は災害時に地域住民に役立つ情報を継続的に提供できる体制を整え、「地域社会に欠かせない放送局」としての地位を確立しています。平時からの地道な備えが、有事の際に活かされる好例といえるでしょう。

5.企業の災害対策の必需品!Jackeryポータブル電源で従業員の“安心・安全”を確保

 

従業員の安否確認や取引先との連絡、情報収集など、事業継続に不可欠な活動の多くは電力に依存しています。そこで注目されているのが、Jackery(ジャクリ)の「ポータブル電源」です。 

ポータブル電源とは大容量バッテリーを内蔵し、さまざま機器に電力を供給できる移動式の電源装置。ガス・ガソリン式の発電機と比べて、以下のようなメリットがあります。 

排気ガスが出ないので、室内でも安全に使用できる(排気ガスが出ない)

騒音・振動がほとんどない

メンテナンスや燃料の管理が不要

軽くて持ち運びが容易

ソーラーパネルセットなら繰り返し充電可能 

Jackery(ジャクリ)ポータブル電源は、防災安全協会の「防災製品等推奨品認証」を受け、企業の防災対策における信頼性も高い製品です。繰り返し充電できるソーラーパネルセットも用意されており、屋根に載せる太陽光発電システムのように大規模な設置工事も必要ありません。Jackery(ジャクリ)ポータブル電源を導入して、災害に強い職場環境を整えましょう。


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6.企業の災害対策に関するよくある質問

 

企業の災害対策に関する、よくある質問とその回答をまとめています。

日本における災害対策の主な取り組みは?

日本政府による主な災害対策の取り組みは以下のとおりです。 

各種災害に対するハザードマップの整備

「防災の日」(9月1日)を中心とした防災訓練の実施

防災教育・啓発活動の推進

企業のBCP策定支援

各地域における防災計画の策定支援

参考:内閣府防災情報のページ「我が国の災害対策の取組の状況等」 

災害対策は、いち企業だけで完結するものではありません。地域や行政との連携をどう図るかも、企業の防災力を高める上で欠かせない視点です。こうした国や自治体の取り組みと連携しながら、自社の防災対策を進めると良いでしょう。

防災・災害対策に取り組む企業一覧は?

防災・災害対策に積極的に取り組んでいる大企業の事例を以下の表にまとめました。 

企業名

取り組み内容の概要

トヨタ自動車

東日本大震災時に部品供給が途絶えたことを受け、サプライチェーン・代替生産先を見直し

鹿島建設

「社員自宅診断」の提供で防災意識を高め、定期的な大規模な夜間休日参集訓練の実施で災害時の初動体制を充実

東京海上日動火災保険

本店被災時に立ち上げる「関西バックアップ本部」の体制構築、地震の震度別の初動体制のマニュアル化、メール配信システムの導入など

大林組

「被害情報集約システム」や「安否確認システム」の導入、インターネットが使えないときにも連絡できる衛星携帯電話の導入など

東日本電信電話(NTT)

停電に備え、蓄電池と非常用発電装置を導入。また、移動電源車によるバックアップ・燃料配送の仕組みも確立

参考:内閣官房「事業主体の種類別(災害とのかかわり方別)テーマ別掲載事例群」

これらの企業は、独自の防災対策やBCPを展開し、先進的な取り組みを実践しています。取り入れられる部分があれば、自社でもマネしてみましょう。

まとめ

 

企業の災害対策は従業員の安全と事業の継続に直結します。マニュアルの作成や防災備蓄の整備を進め、災害に強い企業を作っていきましょう。 

また災害時、事業を継続するためにもっとも重要なのが電力供給です。停電時でも事業活動を維持するためには、ポータブル電源などのバックアップ電源が必須となります。 

Jackery(ジャクリ)ポータブル電源は、防災安全協会の「防災製品等推奨品認証」を受けた信頼性の高い防災アイテムです。軽量ながら高出力・大容量で、災害時の通信機器の使用やスマホ・パソコンの充電、照明確保まで幅広くサポートします。企業防災の必需品として、Jackeryのポータブル電源を備えておきましょう。

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