移動販売を始めたい!保健所の許可を得る要件と必要な手続きを解説
移動販売への期待は、全国で高まっています。オフィス街におけるランチの提供や地方でのスーパー撤退は、移動販売への関心を高めています。またニッチな商品やサービスを提供できることも、移動販売ならではの魅力です。街の課題解決とご自身の得意分野の発揮を両立する目的で、移動販売を始めたいとお考えの方もいるのではないでしょうか?
移動販売に必要な要件や手続きは、何を売るかにより大きく異なります。保健所の許可や届出が必要なケースも少なくありません。特に移動販売に許可が必要なケースでは、事前の準備をしっかり行うことが求められます。スムーズに移動販売を始めるためにも、この記事で確認していきましょう。
食品の移動販売は2種類に分かれる
移動販売で扱う商品として、食品を挙げる方は多いでしょう。食品を移動販売の商材とする際の種類は、ご自身で調理するかどうかという観点から大きく2つに分かれます。そのため、移動販売に必要な許可や届出は、種類ごとに異なることも認識しておきたいポイントです。
それぞれの種類と代表的なケースについて、確認していきましょう。
●自分で調理・販売する
代表的な移動販売のケースとして、自分で調理しその場で販売する「キッチンカー」が挙げられます。腕によりをかけた料理を提供できることに、喜びを感じる方も多いでしょう。オフィス街やイベント会場などに出店する姿を見かけた方も、多いのではないでしょうか。
●調理済みや包装された食品を販売する
移動販売には「移動スーパー」のように、調理済みや包装された食品を販売するパターンもあります。「とくし丸」は、代表的な事業者の一つです。中山間地域などスーパーが撤退した地域において、生活に欠かせないインフラとなっています。
移動販売を始めるために必要な3つの手続き
移動販売を始めるためには、さまざまな手続きが必要です。なかでも法的な要件をクリアすることは、商売を続けていくうえで不可欠です。ここでは移動販売に必須となる3つの手続きを確認していきましょう。
●保健所の営業許可または届出
移動販売を行う際には、原則として保健所に営業許可を申請、または届出が必要です。食品衛生法の改正により、2021年6月1日より全国で基準が統一されました。新しい法令に従い、移動販売で取り扱われる代表的な商品について、必要な許可や届出を以下にまとめました。
取り扱う商品や提供形態 |
必要な許可や届出 |
備考 |
料理や飲料を調理して提供 |
飲食店営業の許可 |
喫茶店営業は、飲食店営業に統合された |
パンや菓子を調理して提供 |
菓子製造業の許可 |
あんパンなど。調理パンも含む(そうざい製造業、飲食店営業の許可は不要) |
牛乳や乳飲料の販売 |
乳類販売業の届出 |
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野菜や果物の販売 |
野菜果物販売業 |
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包装された魚介類の販売 |
魚介類販売業の届出 |
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包装された食肉の販売 |
食肉販売業の届出 |
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あらかじめ製造し包装された弁当を販売 |
弁当販売業の届出 |
自社やキッチンカー内で調理する場合は、飲食店営業の許可が必要 |
米や麦、豆の販売 |
米穀類販売業 |
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包装済みのパンや豆腐、卵などを販売 |
その他の食料・飲料販売業 |
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キッチンカーで営業する場合は、仕込み場所も用意する必要があります。仕込み場所についても、キッチンカーと同様の許可を取得しなければなりません。
許可基準や運用は保健所により異なります。また申請先の保健所も、地域によって異なります。早い段階で、最寄りの保健所に相談するとよいでしょう。
なお食品を扱う場合であっても、長期間保存可能で包装された常温品のみを扱い常温で提供する場合は、保健所の許可も届出もいりません。
●食品衛生責任者の取得
食品の移動販売を行うためには、あらかじめ食品衛生責任者の資格を得る必要があります。但し長期間保存可能で包装された常温品のみを扱い、常温で提供する場合は必要ありません。
以下の資格をお持ちの方は、食品衛生責任者になる資格があります。
・食品衛生管理者または食品衛生監視員の資格を持つ方
・医療職の一部(医師、歯科医師、薬剤師、獣医師)
・栄養士や調理師、製菓衛生師
・船舶料理士
・食鳥処理衛生管理者
・普通職業訓練の「調理科」を修了した方
上記いずれにも該当しない場合は、食品衛生責任者の講習を受け、修了証を受け取る必要があります。講習会は集合形式で、1日かけて行われます。また地域によっては、eラーニングでの受講も可能です。
●法令に適合した車の確保
保健所の検査を受ける際にはあらかじめ車を用意したうえで、移動販売に使える形で準備を済ませておく必要があります。このため、早い段階で保健所のアドバイスを受けることが求められます。
購入した車は、何らかの改造を要する場合も多いでしょう。その場合も保健所のアドバイスに従って行うと、手続きがスムーズに進みます。
また移動販売車は、公道を走行します。車検は購入直後での実施は必須でなくても、おおむね2年以内には車検を受ける時期が来ます。車検を無事に通り営業を続けられるよう、法令に適合した車を確保しましょう。なおキッチンカー用の車を販売する専門業者のなかには車検時の手間と法令遵守を理由に、8ナンバーをすすめるケースもあります。
加えて移動販売を行う場合は、出店場所の管理者から許可を受けなければなりません。道路を使う場合は警察に申請し、道路使用許可を得る必要がありますが、簡単に許可されるわけではありません。
移動販売の許可に必要な車の要件
移動販売に使う車について保健所からの許可が得られるかどうかは、移動販売ができるかどうかの大きなポイントです。要件は多岐にわたり、すべての項目をクリアしないと許可を得られません。加えて、仕込み場所の許可を要するケースも多いでしょう。
どのような要件があり、どのように対応すればよいのでしょうか。ここでは10の項目を取り上げ、移動販売の許可に必要な車の要件を解説します。なお本記事で解説する内容は、あくまでも目安です。実際の要件は保健所ごとに異なる場合がありますから、申請前に保健所で必ずご確認ください。
①冷蔵庫や冷凍庫の設置および電源の確保
食品を安全に保冷するため、冷蔵品を扱う場合は冷蔵庫、冷凍品を扱う場合は冷凍庫の設置が必須です。食品を十分に収納できる容量を選びましょう。冷蔵庫や冷凍庫には、温度計が備え付けられていなければなりません。キッチンカーで使う場合は、冷蔵庫の天板が作業台として使える「コールドテーブル」の活用もご検討ください。
冷蔵庫や冷凍庫の運転には、電気の供給が不可欠です。エンジン停止中でも冷蔵・冷凍を続けられるよう、ポータブル電源などを確保しておきましょう。冷蔵庫や冷凍庫は交流100Vに対応する製品を選ぶと、電源を確保しやすいため便利です。
②シンクと非接触水道の設置
キッチンカーでは洗浄用のシンクを、手洗い用と調理器具洗浄用で別々に用意する必要があります。保健所やメニューによっては、食材洗浄用のシンクの設置も求められる場合があることに注意してください。
このうち手洗い用のシンクには、手洗い後に水を止める行為で手を汚さないよう、手のひら以外で閉栓できる蛇口を備える必要があります。以下のような蛇口を設置してください。
・自動式(センサー式)
・足踏み式
・レバー式
レバー式は閉栓の際に手が触れるため、可能であれば自動式や足踏み式をおすすめします。
また手洗いの際には清潔や消毒のため、石鹸や消毒液、キッチンペーパーなどの設置も求められます。
③タンク
キッチンカーは、十分な量の水を積んでいる必要があります。また使用した水は無断で外部に捨てられないため、積んだ量の水を格納できる排水用のタンクも必要です。
200リットルの給水タンクと排水タンクがあれば、多くのメニューに対応でき、仕込みも可能です。これ以下のサイズとなる場合は使い捨て容器が必須となるとともに、以下の制約も受けます。
・80リットル:大量の水を使わず、2工程までの簡易な調理のみ可能
・40リットル:簡易な調理または単一品目のみ取り扱える
うどんやそば、ラーメンを提供する場合は、200リットルのタンクが必須です。可能であれば、200リットルのタンクを用意するとメニューの自由度が高まるでしょう。
➃扉付きの収納棚
食器や調理器具、常温で保管できる食材も、衛生的に保管する必要があります。扉付きの収納棚を用意して格納し、虫やねずみなどの侵入を防ぎましょう。扉はすき間が生じないよう、ぴったり閉じることが求められます。
⑤照明器具
照明は食品を安全・衛生的に調理するうえで不可欠です。作業や清掃を円滑に行える明るさの照明器具を取り付けましょう。保健所によっては50ルクス以上など、具体的な数値を設定している場合もあります。
⑥換気扇
調理中は、煙が臭いが発生する場合もよくあります。また車内は湿気がこもりやすいため、カビや水滴が発生するおそれもあります。
煙や臭い、湿気を排出するため、移動販売の許可を得るには換気扇の設置も必要です。初夏や真夏は、熱中症を防ぐためにも有効な設備です。
⑦ねずみや虫、ほこりなどが入らない構造
キッチンカーの調理スペースでは、虫やねずみなど、衛生状態を悪化させる要因を排除することが重要です。車のボディに穴が開いていないことはもちろん、開口部には網戸を設置するなど、外からの侵入を防ぐ措置を取りましょう。
⑧運転席との間仕切り
キッチンカーは、運転席と作業場が完全に分かれている必要があります。保健所の許可を得るためには、運転席との間仕切りも必須です。しっかり仕切られていない車を購入した場合は、保健所の検査を受ける前に完璧な間仕切りを設けておきましょう。
⑨ごみ箱の設置
キッチンカーでは食材の切れ端や包装フィルムの処分、使い捨て容器の処分など、廃棄物の発生が避けられません。悪臭や虫の発生、水分が漏れる事態を防ぐため、ふたが付いたごみ箱の設置も必須です。ごみ箱はプラスチック製など耐水性の製品を用意し、掃除しやすいものを用意しましょう。
⑩仕込み場所の確保
キッチンカーの場合、車内ですべての仕込みを行えない場合が多いでしょう。生ものなど、キッチンカー車内での仕込みを認めていない保健所もあります。この場合、仕込みを行える場所を別途用意したうえで、保健所の許可を得なければなりません。
仕込み場所として、自宅の台所は認められないことに注意が必要です。自前で飲食店を開業している場合は、お店のキッチンを使えます。そうでない方の場合は新たに仕事用のキッチンを用意する、シェアキッチンを使うなどの対応が求められます。
移動販売の許可を得る手順
移動販売車の電源としてポータブル電源が一番おすすめ!
移動販売を行うなら、ポータブル電源の活用をおすすめします。どのようなメリットが得られるか、5つの理由に分けて紹介していきましょう。
●さまざまな調理器具や電気機器を使える
ポータブル電源があればコーヒーメーカーや炊飯器など、100V電源で動く調理器具や電気機器を使えます。メニューの幅も広がるでしょう。
車のガソリンを使わずに済むことも、大きなメリットの一つです。ガソリンの残量や排気ガスを気にせず、おいしい料理を安全に提供できることはおすすめする大きな理由の一つです。
関連人気記事:ポータブル電源でどんな家電が使えるのか?
●プロパンガスの契約や発電機が不要で安全性も高い
ポータブル電源は、安全に電源を確保できる点でもおすすめです。調理機器によく使われるプロパンガスや発電機によく使われるガソリンは、取り扱いを誤ると火災や爆発の危険があります。
一方でポータブル電源は簡単に扱えるとともに、安全性の高い機器です。事故のリスクを下げられることも、おすすめするメリットに挙げられます。
●近隣に騒音などの迷惑をかけない
ポータブル電源は、稼働中でも騒音を発しにくいことが特徴です。近隣に騒音などの迷惑をかけにくいことは、スムーズな販売を行ううえで欠かせません。Jackery(ジャクリ)のポータブル電源の音量は、以下のとおりとなっています。
製品名 |
動作時の音量 |
充電時:30dB以下 動作時:42dB以下 |
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充電時:30dB以下 動作時:42dB以下 |
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30dB~55dB |
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53 dB以下 |
50dBでも書店の店内と同等の静けさです。移動販売の箇所は人が集まる場所ですから、騒音による苦情は出にくいでしょう。
一方で発電機は、70dBから75dBの音量があります。セミの鳴き声や地下鉄の車内と同様の音がしますから、ほとんどの方はうるさいと感じるでしょう。あなたのお店に苦情が入るかもしれません。
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●移動先でもソーラーパネルを使って充電できる
移動販売先では、ポータブル電源の電力が使い切る場合もあります。移動販売先の付近にAC電源がなくて、ソーラーパネルを使って、静粛さを保ったままポータブル電源に充電することが可能です。複数のソーラーパネルを持参すれば短時間で満充電にできますから、出力が高い調理機器を使う場合でも安心です。
●不要になった際の処分がしやすい
最近ではポータブル電源を回収する事業者も増えてきました。Jackery(ジャクリ)では送料を支払うことで、Jackery製のポータブル電源を回収してくれるリサイクルサービスを提供しています。不要になっても、廃棄物処理業者を探す必要はありません。多額のお金を払って処分を依頼する必要がないことも、大きなメリットに挙げられます。
移動販売で使えるポータブル電源おすすめ3選
ポータブル電源を移動販売に使うなら、以下の性能を備える製品がおすすめです。
・大容量の電気を蓄電できるポータブル電源
・ソーラーパネル充電できる
ここからはJackeryがおすすめする、3つの製品を紹介します。
●Jackery Solar Generator 2000 Plus|ジャクリソーラージェネレーター2000プラス
Jackery Solar Generator 2000 Plusは、「ポータブル電源 2000 Plus」とソーラーパネル「Jackery SolarSaga 200W」をセットした商品です。ポータブル電源の定格出力は3000Wと、高いことが魅力です。消費電力の高い調理機器も問題なく使