【ユーザーインタビュー】Jackery Explorer 100 Plusが可能にする現代の冒険 | まだ見ぬ斜面を求めるスノーボーダーの旅

自分らしい生き方を楽しむ人々と、その暮らしを支えるJackery製品の魅力に迫るユーザーインタビューシリーズ。

 今回は、北海道の大雪山系の麓の町に暮らし、大雪山系を中心にバックカントリーや登山のガイドをしている中川伸也さんをフィーチャー。これまで数々の映像作品でフリーライドやバックカントリーの魅力を伝えてきた中川さんは今年の春、未知の斜面を求めて仲間たちとパキスタン・ヒマラヤの高所にスキー&スノーボード遠征に出かけました。そして、その遠征を陰で支えたのが「Jackery Explorer 100 Plus」と「Jackery SolarSaga 40 Miniソーラーパネル」。ポータブル電源があることで遠征のスタイルはどう変わったのか、未知の斜面を求めて仲間たちと旅した中川さんの今回の遠征についてお話を訊きました。

パキスタン・カラコラム遠征の全貌

パキスタン・カラコラム遠征の全貌

中川伸也さんがパキスタン・ヒマラヤを旅したのは、2023年と2025年の2回。ヒマラヤと聞くとネパールを思い浮かべる人も多いと思いますが、中川さんが旅したパキスタン北部のカラコラム山域もまた、世界第2位の高峰K28,611m)を筆頭に、世界に14座ある8,000m峰のうち4座がある巨大な山域です。遠征の行程はどのようなものだったのでしょう。

「僕らが滑りに行った場所は途中までK2へのトレッキングとアプローチは一緒で、まず標高3,000mのアスコーレという村まで行き、そこから氷河をずっと遡っていくんです。10日くらい進んでいくとスキャム・ラという5,600mの峠があるので、その峠を超えて奥に広がるスノーレイク氷河帯に至り、そこから今度はビアフォ氷河を下ってまたアスコーレに戻ってくる。全部で120150kmくらいの行程で氷河をぐるっと周遊できるんです。その道中5,000mを超えたところにある急峻な斜面で、滑りたい斜面を探して滑るというものでした」

 メンバーは佐々木大輔を隊長、中川伸也を副隊長に、佐伯岩雄、河野克幸、押味輝の滑り手5人、関口雅樹、佐藤佳幸、國分知貴の撮影チーム3人という編成。パキスタンの首都のイスラマバードからアスコーレまで車で3日、アスコーレから今度は大勢のポーターやロバと共に4日かけて氷河の入り口(4,200m)まで歩き、そこからようやく8人だけの氷河上の旅が始まります。6070kg近い3台のソリを手分けして曳きながら80本以上ものクレバス(氷の裂け目)を越え、標高5,200mを超す滑走可能エリアを目指して氷河を遡ります。

 「なかなか遠い場所です。日本を出発して滑れるまでに2週間かかってますから。おそらく半径50km近く人が住んでいない完全にリモートな場所に行くからこそ、何かあってもすべて自分たちで対処しなければなりませんし、自分たちの感覚を研ぎ澄ませながら滑れる場所、滑れない場所を見極め、どうやって移動するかも含めて、トータルでひとつの冒険なのかなって感じです」

単にテクニカルな斜面を求めるのであれば、アラスカなどの比較的アクセスしやすい山域でヘリを使って滑るのが一番手っ取り早いのかもしれません。しかし中川さんがこだわっているのは、自分の足で長い時間をかけて歩き、ほとんどの人が見たことも行ったことも、ましてや滑ったこともない急峻で開けたような斜面を見つけ、できる限りチャレンジングなラインを見出して滑るというものでした。

 そんな冒険的スノーボードをするうえで避けて通れないのが、荷物の問題です。40日間にも及ぶ遠征で必要となる滑走・登攀装備や食糧といった衣・食・住すべての荷物を吟味し、ソリに積まなければなりません。当然途中で補充はできないため、8人分の食料と、水やお湯を作るための燃料のガソリンだけでも100kg近くになったと言います。そんなシビアな遠征に携行したのが、「Jackery Explorer 100 Plus」と「Jackery SolarSaga 40 Miniソーラーパネル」でした。

「Remote Terrain(山深く過酷な環境)」での電気の使い道

「Remote Terrain(山深く過酷な環境)」での電気の使い道

「僕たちは自分たちの滑りを記録して多くの人たちとシェアすることを目的としているので、電気を使うものとしてまずカメラなどの記録メディアは欠かせません。僕ら滑り手はスマートフォンとGoProとコンデジくらいなので、Jackery1台を2人でシェアして使っていました。100 Plusは容量も大きいので、1回フル充電すれば頻繁に充電する必要もなかったというのも大きい。コンデジとGoPro1回充電すれば34日、スマートフォンもだいたい23日は使えましたし、あとは充電式のヘッドライトを使っている人も2日に1回くらいの割合で充電していましたね」

 手の平サイズの「Jackery Explorer 100 Plus」は最大128Wの定格出力で、USB-C2口、USB-Aを1口搭載しているため、複数の電子機器を同時に充電することができます。ソーラー充電に対応し、フル充電でスマートフォンなら約8回分の蓄電が可能。メンバーの中にはあらかじめ端末にダウンロードしておいた映画を観ている人もいたりと、氷河上で長期間過ごすにあたって、ポータブル電源は貴重な娯楽の供給源でもあったと中川さんは振り返ります。

 「毎日晴れているわけではなかったので、とにかく日中は太陽が出ていたら充電するようにみんなで心がけていました。氷河上ではソリの上にソーラーパネルを乗せて歩きながら充電したり、キャラバンをしている時はバックパックに付けたトレッキングポールに紐でソーラーパネルを引っかけて充電できている状態にしたり。あとはベースキャンプを作った後は、滑りに行っている間もテントにソーラーパネルを乗せて充電していました」

Jackery Explorer 100 Plus」は最大100Wの充電に対応し、100Wのソーラーパネル1枚で約2時間、今回の遠征に持参したJackery SolarSaga 40 Miniなら約5.5時間でフル充電が可能。そしてこのポータブル電源の最大の特徴は、なんと言ってもそのサイズと容量です。99Whという飛行機に持ち込めるバッテリー容量であることも、海外のRemote Terrain(山深く過酷な環境)」を旅するうえでは外せない重要な要素なのです。

 「結局飛行機に乗せられないとダメなんです。仮に郵送するにしてもバッテリー類は航空便には乗せられないはずなので、船便と陸送になると思いますが、そうなると膨大な時間がかかってしまって遠征計画が立てづらくなってしまいますから」

 では、Jackeryを使う以前の遠征ではどうしていたのでしょうか。中川さんに尋ねると、乾電池式の充電器と予備の乾電池をたくさん持っていってたと言います。

 「あとはあまり無駄に撮らないようにして、電源が落ちたら諦めていたと思うんですよね。スマートフォンとか特にそうです。ないならないでいいかと昔は思っていましたが、やっぱり安全を考えると使えるに越したことはありません。スマートフォンに事前に現地の地図さえ落としておけば、電波がなくてもGPSで現在地がわかりますから」

さらに技術の進歩によって、冒険のスタイルは近年顕著に変わってきていると中川さん。象徴的なのは、アルパインクライミングなどの冒険的行為をする人たちが携行するようになっているのが「inReach」と呼ばれる衛星通信機器。電波がない場所でもテキストメッセージが送れたり、端末周辺の天気予報を取得できるなどのサービスを備えているのだとか。

 「それがあることで日本にいる仲間たちからもっと詳しい天気予報を送ってもらうこともできるし、僕たちの位置情報や状況を発信することもできるから、家族や仲間たちに安心を与えることができます。実際今回の遠征では滑走中に事故が起きてしまい、レスキューを呼ぶことになったんですが、衛星通信機器のおかげでいち早くレスキューを呼べました。もちろんそれも電気で動いているので、長期にわたる遠征では発電と蓄電の二つのシステムが揃っていることが重要だと今回改めて思いましたね」

※ 5,960mの無名峰を登って順番に滑走する際に、隊長の佐々木大輔が岩山と氷河の間の割れ目に落ちて腰部を強打。自力歩行が困難だったためレスキューを要請し、翌朝パキスタン陸軍のヘリでスカルドゥの陸軍病院に搬送された。現在はアウトドアガイドの仕事にも復帰を果たしている

未来のポータブル電源はどうなっていく?

未来のポータブル電源はどうなっていく?

Photograph by Tomoki Kokubun

中川さんの二度目のパキスタン遠征は、2023年に続いて今回も予定していたルートで氷河周遊をすることはできなかったそうです。そして、トータル39日間旅をして滑走できたのはわずか2日。もし事故が起きなければあと数日は滑る時間が作れたのかもしれませんが、「予定通りにいかないのも旅のひとつの要素なので」と中川さんは平然と答えます。

「たしかに『40日間も行ってて2本しか滑ってないんですか?』って言われることもあります。でも結局、そこに至るすべての行程がその1本なり2本の価値に繋がっている。あそこの斜面を滑ろうと思った時に、自分の足で数百メートル登りながら、『見た目より斜度がきついな』とか『雪の状態はこうなっていたんだ』と地形や雪質を読むことで、より安全に滑れるだろうし、もっと攻めた滑りができるかもしれない。だから最近は、登っている時間もけっこう好きですね」

 若い時はとにかくいっぱい滑ることを意識していたという中川さんも、今では1本を滑るまでのその過程に面白みを感じるようになってきたと言います。スノーボードだけでもフリースタイル、フリーライド、バックカントリーと楽しみ方は人それぞれ。そんな多様な価値観についての中川さんの言及は、次第にアウトドアスポーツとは切っても切れない“安全”へと話題は移っていきます。

「今登山やトレッキングではUL(ウルトラライト)なものがすごく流行っていて、これは軽いからこそ早く歩けるし、長い距離を早く歩き切ってしまうことが安全につながるという考え方。一方、僕らガイドはもうちょっとヘビーな装備が基本で、やっぱり重いから時間もかかるんですが、もし23日停滞することがあっても、テントを立ててその中にいればみんなの安全を担保できます。だから一概にこれが安全とは言うのはなかなか難しくて。軽装だから安全じゃないわけではないし、重装備だから安全とも言えないんです」

 そう話す中川さんでしたが、モバイルバッテリーやポータブル電源は多少荷物になったとしても山に携行してほしいと説きます。

 「今は登山用GPSアプリでログを取りながら歩く人がすごく多いのですが、通信もしているからバッテリーの消耗が早いんです。だからモバイルバッテリーで充電しながら山を歩いてる人も最近は増えています。それに便利になった反面、紙の地図ではなくスマートフォンでしか現在地を把握できない人も圧倒的に多くなっているように思います。

そうした現状を踏まえると、モバイルバッテリーやポータブル電源というのはもはや安全を担保するツールになっている。だからこの先さらにポータブル電源やソーラーパネルへの期待は高まると思います。もっとコンパクトで充電効率のいいものが求められるでしょうし、今後さらに技術が発展していけば、ソーラーパネルもしなやかになって、結果的に軽くなるでしょうね。

僕らのようなエクスペディション的なトリップには、軽さは絶対に必要。ゆくゆくは繊維のように薄くしなやかになれば、衣類やバックパックにくっつけて、日中ただ歩いているだけで充電ができるようになるかもしれませんよね」

 冒険の歴史の背後には、衣類をはじめとするあらゆる道具や技術の進歩があります。そして中川さんの話を聞いていると、ポータブル電源もまたこれからの冒険に欠かせないツールになりつつあるのだと感じました。デジタルデバイの進歩と相まってどこにいても電気が自由に手に入るようになれば、物理的な距離を越えて、人と自然の距離感はもっと縮まっていくのかもしれません。

中川 伸也

1978
年北海道生まれ。14歳でスノーボードを始め、ジブやフリースタイルで活躍したが、次第に活動の中心をバックカントリーでの映像や写真撮影にシフト。活動の中心は旭岳などの大雪山系。ガイドカンパニー「Natures」を立ち上げ、夏冬の山を案内するガイドとして、同時にプロスノーボーダーとして活動を続ける。


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