1.災害時はお風呂に水をためる理由
「災害対策としてお風呂の水をためる」。もはや常識として定着していますが、お風呂の水の用途はかなり限られます。まずは、お風呂に水をためる具体的な理由を見ていきましょう。
●手洗い、食器洗いなど生活用水を確保する
災害時、もっとも使う機会が多いのが「手洗い」や「食器洗い」などの生活用水です。水道が止まっても、お風呂の水は以下のような生活用水として幅広く活用できます。
・手洗い用の水
・食器洗い用の水
・掃除用の水
・洗濯用の水
・体を拭くための水(熱中症対策)
たとえば、阪神・淡路大震災では126万5,730戸で断水が発生し、完全復旧までに90日以上かかりました。東日本大震災でも最大5ヶ月にわたる、256万戸もの断水が発生しています。
参考:内閣府防災情報のページ「阪神・淡路大震災教訓情報資料集【05】道路・鉄道・ライフラインの被害」
参考:日本水道協会「水道の被害と対応~東日本大震災復興支援本部の活動~」
このような長期の断水が起きた際には、お風呂の水は貴重な資源となるのです。
●【地震のときはダメ】トイレを流す水として使用する
災害時にトイレの水が流せないと、衛生面や臭いの問題が発生します。お風呂の水があれば、直接便器に流して汚物を流すことが可能です。
ただし地震の発生直後は、下水管が破損していて汚物が漏れだすリスクがあるため、トイレに水を流してはいけません。たとえば2016年の熊本地震では、液状化現象による影響で地下にある排水管が破損し、お風呂やトイレが使えなくなりました。
参考:KNB「液状化被害で排水管損傷 トイレや風呂使えず 高岡市伏木地区」
地震の後にトイレを使う場合は、まず自治体の広報や防災無線で下水道の状況を確認します。下水管の破損があるなら、簡易トイレなどで代用してください。破損の有無が確認できない場合は、流すのは控えたほうがよいでしょう。
●【緊急時のみ】ろ過・煮沸をして飲料水として使う
お風呂の水は基本的に飲料水として使うべきではありません。しかし、他に選択肢がない緊急時には最終手段として飲用水にしましょう。ただし、衛生面に問題があるため、必ず次の処理をしてください。
1.清潔なタオルなどでろ過し、目に見える不純物を取り除く
2.可能であれば浄水器や浄水ボトルで再度ろ過する
3.15分以上しっかり煮沸する
4.冷ましてから使用する
ただし、こうした処理をしても100%安全ではありません。肌の汚れや入浴剤などの成分が残っている可能性があるため、あくまで他に飲料水がない緊急時の最終手段と考えてください。
災害時に安全な飲料水を確保するには、やはり事前の備蓄が欠かせません。お風呂の水とは別に、1人あたり1日3リットル、最低でも3日分(9リットル)の飲料水を備蓄しておくべきでしょう。
関連人気記事:【災害対策】水の備蓄目安は?水の選び方や賢く揃えるためのアイデアも紹介
2.災害時にお風呂に水をためる際の注意点

お風呂の水は、とくに衛生上の問題があります。正しく活用するために、以下の注意点を押さえておきましょう。
●飲料水や調理には使用しない
お風呂の水は基本的に飲料水や調理には使わないようにしましょう。入浴時の汗や皮脂・雑菌などが混ざっているため、衛生面に問題があります。こうした雑菌を含んだ水を飲んだり調理に使ったりすると、下痢や腹痛などの健康被害を引き起こすかもしれません。
飲料水や調理用の水は、別途ペットボトルや水タンクで備蓄しておくのが安全です。もし飲料水が完全に尽きてしまった場合のみ、前述のようにろ過・煮沸を徹底してから最終手段として使いましょう。
●掃除が不十分だと雑菌やカビが発生する可能性がある
お風呂の水を長期間ためておくと、雑菌やカビが発生しやすくなります。とくに夏場は気温が高くなるため、水が腐りやすい環境になります。雑菌やカビの発生を防ぐには、以下の方法で対策しましょう。
・浴槽は使用前にしっかり掃除しておく
・入浴剤は使わない
・水を毎日入れ替える
・塩素系の消毒剤を少量加える
腐った水は悪臭の原因になるだけでなく、衛生面でも問題があります。水面にぬめりや浮遊物が見えたら、使わないようにしましょう。
●水漏れが発生する可能性がある
浴槽に水をためたままにすると、劣化した排水栓や浴槽の小さなひび割れから水漏れが発生するリスクがあります。水漏れを防ぐには、以下のような方法で対策しましょう。
・浴槽の排水栓が正常に閉まるか確認する
・排水栓の下にゴム製の栓を重ねて使用する
・浴槽にひび割れがないか確認する
・水位は浴槽の8割程度にとどめる
なお、災害により水漏れが起きていても、通常の方法で排水してはいけません。排水管の破損により、流した水が逆流したり、近くの建物やほかの階に流れてしまう可能性があるためです。手間はかかりますが、バケツなどですくって外に捨ててください。
●子どもがいる家庭では転落事故に注意する
小さな子どもが誤って浴室に入り、水をためたままの浴槽に転落する事故が頻繁に起きています。そのため、消費者庁では子供がいる家庭では入浴後に浴槽の水を抜くことを推奨しています。
参考:消費者庁「御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!」
浴槽の水は災害時に命を守るためのものですが、逆に小さな命を危険にさらすリスクもあることも知っておいてください。浴室のドアに簡易的なロックを追加したり、浴槽カバーを用意したりして、子どもが一人で浴槽に入れないような環境をつくりましょう。
3.災害時に必要な水の量|お風呂の水以外にも備蓄が必須
お風呂の水は生活用水として便利ですが、それだけでは災害時の水の備えはできません。安全な飲料水の確保も含め、どのくらいの水が必要なのかを把握しておきましょう。
●災害時に1人あたり必要な飲料水の量の目安は「3L×日数分」
災害時に必要な飲料水の量は、1人あたり1日3リットルが目安です。これは飲み水だけでなく、調理用の水や生活用水も含んだ量になります。
たとえば4人家族の場合、3日分の備蓄をするなら「3リットル×4人×3日 = 36リットル」が目安。2リットルのペットボトルで考えると18本必要になります。
夏場や高齢者・乳幼児がいる家庭では、さらに多めの備蓄が望ましいでしょう。また、ペットを飼っている家庭では、ペット用の水も忘れずに準備してください。
●災害時に使える水源:応急給水拠点・エコキュートタンク内の水
自宅での備蓄以外にも、災害時に利用できる水源を知っておくと安心です。
各自治体には「応急給水拠点」が設置されています。災害時に給水車が水を運んでくる場所で、避難所や公園などに設けられることが多いです。多くの自治体では、防災マップやホームページで応急給水拠点の場所を公開しています。自宅から歩いていける範囲にどの給水拠点があるか、事前に確認しておきましょう。
ただし、災害の状況によっては、応急給水拠点がすぐに開設されるとは限りません。自宅にも飲用水を備蓄しておきましょう。
┃エコキュートタンク内の水
エコキュートなどの給湯器を使っている家庭では、タンク内の水が使えることがあります。機種により最大300~560Lの水が入っており、災害時には貴重な水源になるでしょう。
取り出し方は機種によって異なるので、取扱説明書で確認しておいてください。一般的には非常用取水栓が付いているので、そこから水を取り出せます。しっかりと煮沸すれば飲むことも可能です。
4.お風呂以外の水を貯める方法と保存のコツ

災害時には応急給水拠点や給水所が設置されますが、それだけでは足りないことがほとんどです。そこで、自分でできるお風呂以外の水の備蓄方法を紹介します。
●ペットボトルやタンクで水を備蓄する
水道水を自分でペットボトルやポリタンク・ウォーターバッグに入れれば保存できます。ただし、以下の点に注意してください。
・賞味期限は常温で3日、冷蔵で7日程度のため頻繁に入れ替える
・ペットボトルはよく洗浄して乾かす
・水道水は満タンまで入れ、空気を抜く
・直射日光の当たらない冷暗所で保存する
20リットル程度のポリタンクなら、家族の3日分の飲料水をコンパクトに保存できます。「ミネラルウォーターを大量に買うお金がもったいない」という方は実践してみましょう。
●ウォーターサーバーを導入する
災害への備えと日常の利便性を兼ねるなら、ウォーターサーバーの導入も検討する価値があります。ウォーターサーバーのメリットには以下のとおりです。
・普段から美味しい水が飲める
・赤ちゃんのミルクにも使える新鮮な軟水が確保できる
・定期的に水が配達されるので、買い物の手間が省ける
・停電していても使える(※加温機能は止まります)
最近では「サーバーのレンタル料は無料、水代だけ」のサービスも増えているので、費用を抑えて導入できるようになってきました。ただし、契約内容や料金体系はサービスによって異なるので、複数社を比較して決めるのがおすすめです。
5.災害時の強い味方!「Jackery Solar Generator」でもしもに備えよう
水の確保とあわせて考えたい災害対策が、電源の確保です。停電が長引くと、スマートフォンの充電ができなかったり、冷蔵庫の食材が腐ってしまったりと、さまざまな不便が生じます。
そんなとき頼りになるのが、持ち運べる大容量バッテリー「ポータブル電源」とソーラーパネルを組み合わせた「Jackery Solar Generator」です。例として、以下のメリットがあります。
・スマホを何度も充電できるので、バッテリー切れで連絡が取れなくなる心配がない
・照明をつければ真っ暗な夜でも地震におびえて過ごさずに済む
・「水はあるけど電気がない」場合は給湯器に給電してお風呂も沸かせる
・電子レンジなどの調理器具や電気毛布などの冷暖房、浄水器などの動作がこの1台でOK
・持ち運べるから避難所にも持ち込める、キャンプなどのアウトドアにも◎
・普段は太陽光発電で節電効果も
電気が復旧したあとも、普段使いや野外活動で活躍する「買っておいて損はない」防災アイテムです。いつ来るか分からない災害に備えて、1台用意しておきましょう。
6.災害時のお風呂の水に関するよくある質問
ここでは、災害時のお風呂の水に関するよくある質問にお答えします。
●冬にお風呂のお湯を貯めたままにすれば凍結防止になりますか?
お風呂のお湯をためておけば浴室内の温度が保たれ、水道管の凍結リスクを下げる効果が期待できます。ただし、お湯の温度が下がると結露が発生し、カビの原因になることがあります。浴槽のフタをしっかり閉めて、湯気が室内に広がらないようにしましょう。
また、浴室から離れた地点の凍結リスクは減らせないので、水道管にヒーターをつけるなどの対策もしておくのがおすすめです。
●災害時にお風呂に入るにはどうすればいいですか?
災害時にも、以下の方法でお風呂に入れる可能性があります。
・ポータブル電源で給湯器を稼働させる
・薪やカセットコンロでお湯を沸かす
「断水していないけど、停電している」状況なら、ポータブル電源で給湯器を動かせばいつもどおりお風呂を沸かせます。給湯器の稼働は100~150Wほどの小さな電力で十分なため、Jackeryでいうと最小クラスの「ポータブル電源 240 New」のような価格の安いタイプでもOKです。
●災害時のお風呂の代わりになるものはありますか?
長期間お風呂に入れない場合には、以下のようなお風呂の代わりになるグッズが役立ちます。
・ポータブルシャワー:充電した電気・もしくは太陽光で水を温め、シャワーとして使える
・ドライシャンプー:スプレーして拭き取るだけで髪のベタつきやにおいを緩和する
・大判ウェットタオル:全身を拭いて清潔を保つ
・足湯セット:足湯バケツで足だけでもお風呂に入って温まる
・除菌シート:気になるところの汚れ落とし・除菌に使える
普段使いやキャンプなどで活躍するアイテムも多いので、防災以外のシーンでも役立つのがポイント。多めに備蓄して、普段から使っていけばムダにはならないでしょう。
まとめ
お風呂の水は、災害時に生活用水やトイレの水として活用可能。どうしても飲用水がない最悪の場合は、ろ過・煮沸をすれば飲むことも可能です。ただし、次の点に注意しましょう。
・地震のあとはトイレを流すのには使わない
・飲料水や調理用には基本的に使わない
・浴槽を清潔に保ち、雑菌やカビの発生を防ぐ
・水漏れに注意する
・子どもの転落事故を防ぐ
おふろの水はあくまで「生活用水」としてしか使えません。ペットボトルやタンクでの水の備蓄、ウォーターサーバーの導入などで、必ず「1人1日あたり3リットル」を目安に飲用水も確保しておいてください。
また、「Jackery Solar Generator」のようなポータブル電源があれば、停電時にも電気が使える安心が手に入ります。「停電していて断水はしていない」シーンなら、給湯器を動かしてお風呂を沸かすことも可能です。いつ災害が起きても良いように、備蓄水とポータブル電源の備えをはじめてみてはいかがでしょうか。