1.在宅避難とは
在宅避難とは、地震や台風、豪雨などの災害が発生した際に、自宅で避難生活を送ることを指します。在宅避難ができるのは、自宅建物の倒壊や火災のリスクがない場合に限ります。
安全に住み続けられるのであれば、必ずしも避難所に行く必要はありません。在宅避難する場合でも「避難者カード」を提出すれば、避難者として登録されます。避難者として登録されていると、避難所と同様に支援物資の受け取りが可能です。
2.在宅避難のメリット
災害時の避難といえば避難所が思い浮かびますが、自宅が安全なら「在宅避難」を行うのも有効です。避難所よりも精神的なストレスを軽減でき、健康的な生活を送れる可能性があります。在宅避難のメリットは、以下のとおりです。
●住み慣れた環境で生活できる
在宅避難の最大のメリットと言えるのが、住み慣れた環境で生活できる点です。避難所には自宅のような設備は整っておらず、他人と共同生活を送ります。自分の家なら、日頃使い慣れた家具や設備が揃っているため、災害時にも日常に近い生活が送れます。
夜は普段と同じベッドで眠れるので、睡眠不足になる心配がありません。他人の声や生活音でストレスを抱える恐れもなく、精神的なストレスを軽減できます。
●プライバシーが守られる
他人と共同生活を行う避難所と異なり、自宅で生活するのは家族だけなので、プライバシーが守られます。避難所の場合は、個人のスペースが周りから見えないように仕切られているわけではありません。
避難所で生活をしていると、女性の着替えや子供の授乳など、周りの目が気になる場面が数多く存在します。プライバシーを確保できなければ、精神的なストレスを抱えやすいと言えるでしょう。また、在宅避難は、置引や強姦などの犯罪に巻き込まれるリスクも防げます。
●避難経路での危険を回避できる
災害が発生した直後は、道路の陥没や冠水、倒壊した建物や落下物など、避難所までの道中に思わぬ危険が潜んでいることがあります。在宅避難であれば、避難経路で危険な目に遭うリスクがありません。
また、避難所に向かう際には大量の荷物を持参しているので、普段よりも動作が遅れます。悪天候や夜間での避難になると、視界が悪くなったり路面で転倒したりと、怪我のリスクはさらに高まるでしょう。
3.在宅避難のデメリット
災害時に避難所へ行かず、自宅で生活する在宅避難は、快適さやプライバシーの面でメリットがあります。しかし、支援物資の受け取りづらさや、情報不足による孤立のリスクなど、以下のデメリットも見逃せません。
●支援物資が受け取りにくい
避難所と比べて、在宅避難は支援物資を受け取りにくいのがデメリットです。災害時の物資供給は、基本的に避難所を中心に行われるため、自宅で避難している人は支援物資を受け取るのに時間を要する恐れがあります。
自治体が在宅避難者を把握しきれていない場合、支援が後回しになるケースもあるでしょう。在宅避難を行う場合は、支援物資に頼らずに生活できる準備が欠かせません。
●最新の情報にアクセスしづらい
在宅避難では、自治体が発信する災害に関する最新情報にアクセスしづらくなります。避難所は自治体が管理しているため、常に以下のような最新の情報が共有されます。
・気象情報
・避難指示の情報
・停電の復旧目途
・支援物資の配布状況
・危険地域の情報
最新の情報にアクセスできなければ、最悪の場合、逃げ遅れて命を落とす事態にもなりかねません。災害時には停電が起きている可能性もあるので、在宅避難では如何なる状況でも最新情報にアクセスできる手段を確保する必要があります。
●助けが来ないリスクがある
在宅避難では、二次災害によって助けが必要になったとしても、助けを呼べないリスクがあります。例えば、家具や家電が転倒して身動きが取れない状況になった場合、一人で在宅避難していると、外部に助けを求めるのは困難です。
停電によって連絡手段が途絶えていると、外部との接触はさらに難しくなります。一方の避難所では、常に人が近くにいる環境なので、助けをすぐに呼べます。
4.避難所か在宅避難かの判断基準
災害が起きた時、避難所か在宅避難かの判断を誤ると、さらに危険な状況に陥りかねません。避難所か在宅避難かの判断基準は、以下のとおりです。
避難所 |
在宅避難 |
・自宅の破損が大きい ・余震で自宅が大きく破損する恐れがある ・火災や浸水、土砂崩れなどの危険がある ・他者のサポートを要する ・数日間生活できるだけの物資がない ・避難指示が発令されている |
・自宅の破損が少ない ・余震が起きても倒壊のリスクが低い ・火災や浸水、土砂崩れの危険がない ・生活に大きな問題がない ・他者のサポートが必要ない ・必要な物資を確保できている |
5.在宅避難に必要なものリスト5選
在宅避難は外部からの支援が届きにくく、ライフラインが途絶える可能性もあるため、必要な物資をしっかりと準備しなければなりません。避難生活の長期化を想定して、最低でも3日分、できれば7日分の備蓄が必要です。在宅避難に必要なものリストを紹介します。
●飲料水
災害時には断水が起こるケースがあるため、飲料水の確保が欠かせません。人間は水を一滴も飲まないと、4〜5日程度しか生きられないと言われています。在宅避難に備えて、一人あたり1日3Lの水を確保しておきましょう(※1)。
通常のミネラルウォーターではなく、賞味期限が5年〜10年と長い保存水がおすすめです。日常的に災害用として水を多めに買っておき、なくなったら買い足すのがよいでしょう。
●非常食
在宅避難では食料の支援物資がいつ届くか分からないため、3日〜7日分の非常食を常備してください。物流機能が停止していたり、停電が起きていたりすると、スーパーやコンビニなどで食品が手に入らない可能性もあります。
非常食は、栄養バランスを考慮して、以下の食品を選びましょう。
分類 |
食品 |
主菜 |
肉・魚・豆の缶詰、レトルト食品、乾物 |
副菜 |
野菜の缶詰、インスタント味噌汁、即席スープ |
主食 |
パックご飯、缶詰パン、カップ麺 |
果物 |
果物の缶詰、ドライフルーツ、果物ジュース |
●防災ラジオ
在宅避難では、避難所に比べて最新の情報にアクセスしづらくなるため、防災ラジオが必要です。電波障害に強いワイドFMに対応してれば、災害の影響を受けづらく、迅速に情報収集が行えます。災害発生時には、スマホは外部との連絡手段として重要なので、情報収集には防災ラジオを使用するのがおすすめです。
●簡易トイレ
災害時には水を流すと逆流したり、断水で水が出なくなったりする恐れがあるため、簡易トイレを用意しておきましょう。簡易トイレは、大容量タイプの販売が多く、自宅の便器にセットして使用するのが特徴です。
排泄は1人1日5回程度を想定して、簡易トイレを選びましょう。災害時には自治体によるゴミの回収も停止している恐れがあるため、防臭力の強さや凝固剤の多さも重要です。
●ポータブル電源
災害時に送電設備が損傷を受けると、3日以上の停電が発生する恐れがあります。在宅避難で電化製品を稼働するには、ポータブル電源が必要です。ポータブル電源とは、内部のバッテリーに大量の電気を溜め込み、停電時も電化製品に給電できる機器を指します。
停電が起きている在宅避難でポータブル電源が活躍する場面は、以下のとおりです。
・エアコンや電気ストーブなどの冷暖房機器を使い、快適な気温を維持できる
・電子レンジや電気ケトルなどの調理家電を使い、簡単に温かい料理が作れる
・冷蔵庫に給電し、食品が傷むのを防げる
・夜の暗闇を照らすLEDライトを長時間点灯させられる
・外部の連絡手段になるスマホを常にフル充電にしておける
・防災ラジオに給電し、常に最新の情報を取得できる
在宅避難が長期化するケースも想定して、高出力かつ大容量のポータブル電源を常備しておきましょう。創業から13年間で世界販売台数500万台を突破した実績を誇るJackery(ジャクリ)製品であれば、複数台の家電を同時に動かして、快適な避難生活が実現します。
耐震性や耐衝撃性、耐火性などに優れているため、災害時にも問題なく使用できます。UPS&パススルー機能搭載により、停電時には0.02秒未満で電気供給源の切り替えが可能です。リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載し、10年以上も災害対策として活躍します。
防災に特化した防災製品等推奨品認証やフェーズフリー認証を取得しているJackery(ジャクリ)のポータブル電源を、ぜひ在宅避難に備えて揃えておきましょう。
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6.在宅避難における3つの注意点
在宅避難では、避難所と異なり、自分の身は自分で守らなければなりません。災害時に起こりうるリスクを把握し、徹底した準備が重要です。在宅避難における注意点を紹介します。
●安心して生活できるスペースを確保する
在宅避難を行う場合、まずは安心して生活できるスペースを確保しましょう。自宅の建物は無事だったとしても、窓ガラスが割れたり、家具が倒れたりして生活できる状況ではなくなる恐れがあります。在宅避難に備えた家作りの方法は、以下のとおりです。
・窓ガラスやガラス扉にガラス飛散防止フィルムを貼る
・家具転倒防止器具で家具、電化製品を固定する
・扉や戸棚には中身が飛び出さないようには留め具を装着する
災害発生時には二次災害に注意しながら、室内を片づけて安全なスペースを確保します。
●防犯対策を徹底する
災害時には、混乱に乗じて空き巣や詐欺などの犯罪が増加するので、防犯対策を徹底しましょう。在宅避難では、洗濯物を干して在宅を周囲にアピールしたり、外出時には戸締りを徹底したりする工夫が重要です。窓ガラスが割れている場合は、外部から侵入される危険もあるので、ダンボール等で早急に補強してください。
●排水管の安全確認後に排水する
災害によって自宅の配水管が破損している場合があるので、排水管の安全確認後に排水するようにしましょう。無理やり排水してしまうと、低層階で水が漏れて、近隣住民に迷惑がかかる可能性があります。ただし、排泄を我慢すると健康に悪影響を及ぼすので、排水が不要な簡易トイレを使用するのがおすすめです。
7.在宅避難に関するよくある質問
最後に、在宅避難に関するよくある質問を紹介します。災害時に在宅避難か避難所かを迷っていると、逃げ遅れるリスクが高まります。災害時に迅速に行動するために、在宅避難を行う基準を明確にしておきましょう。
●在宅避難できる家とできない家の違いは?
災害時に在宅避難できる家とできない家の違いは、被害と危険性の有無です。災害によって自宅の破損がある場合や、周辺で火災や土砂災害、浸水などの危険性がある場合には、避難所に向かう方が安全です。また、在宅避難できる家であっても、数日間生活するだけの物資を備蓄できていなければ、在宅避難は望ましくありません。
●在宅避難では支援物資がもらえない?
避難者は、在宅避難であっても支援物資の支給対象です。避難者として認定されるためには、地域防災拠点で避難者カードを提出しなければなりません。
避難者として登録されれば、避難所にいる方と同様に支援物資を受け取れます。ただし、自宅に支援物資が送られてくるわけでなく、地域防災拠点まで取りに行く必要があるので、注意してください。
●マンションでは在宅避難が有効?
戸建て住宅に比べるとマンションの方が安全性は高いため、災害による被害を受けづらく、在宅避難が可能である場合がほとんどです。ただし、マンションで在宅避難する場合には、以下のような注意点も把握しておく必要があります。
・排水管が壊れている可能性があるため、安全確認の前に水を流さない
・停止し閉じ込め被害に遭わないために、エレベーターには乗らない
・ゴミの収集は停止する恐れがあるため、ゴミは自宅に保管する
・マンションの防災対策を確認しておく
●南海トラフ地震が来た時、避難所と在宅避難、どっちですか?
いつ起きてもおかしくないと言われている南海トラフ地震。最大震度7、最大津波高30m超えが予想されています。南海トラフ地震が来た時に、避難所に向かうか在宅避難を行うかは、被害状況や周辺の危険性で判断しましょう。自宅の破損がなく、二次災害のリスクもなく、十分な物資を備蓄できている場合は、在宅避難でも問題ありません。
8.能登地震で在宅避難した体験談を紹介
2024年の元旦に起きた能登半島地震では、在宅避難者が4500人を超えました(※2)。登録作業が困難な高齢者を考慮すると、在宅避難者数はさらに多いと予想されています。実際に、能登地震で在宅避難した方の体験談を見ていきましょう。
■74歳 男性
支援物資の届け先は避難者が多い指定避難所に集約されたため、近くの避難所に物資が届かない。自分で買い出しに行かないといけないので困る。
■86歳 女性
地震から2か月間も入浴できていない。歩いて20分の距離で入浴支援を受けられるが、湯冷めして体調を崩すのが心配で利用していない。
※2参考:NHK「能登半島地震 石川県の“在宅避難者”4500人超」
まとめ
在宅避難とは、災害発生時に避難所へ避難するのではなく、自宅で避難生活を送る方法です。在宅避難は住み慣れた環境で生活できて、プライバシーを確保できるというメリットがあります。一方で、支援物資の受け取りや最新情報へのアクセスは困難です。
災害時には、被害を受けておらず、二次災害の危険がない場合に限り、在宅避難を選択しましょう。災害はいつ起きてもおかしくないので、必要な物資は早めに備蓄してください。