1.BCMとは?BCPとの違いも解説
BCMとBCPは混同されがちですが、それぞれ定義が異なります。BCMとBCPの定義や目的の違いを解説しますので、基礎知識として頭に入れておきましょう。
●BCM(事業継続マネジメント)|BCPの策定・運用に関するマネジメント全般
BCM(Business Continuity Management)とは、自然災害や感染症を含む緊急事態発生時に事業を継続・早期復旧させるための組織的な仕組みです。BCPで策定した計画を実際に「どう運用し、見直し、改善していくか」の継続的なマネジメント要素を中心に構成されます。
BCMのプロセスには、従業員へ向けた定期的な訓練や教育も含まれます。単に緊急事態に対する計画を「作る」だけでなく「機能させ続ける」ことが主な目的です。
●BCP(事業継続計画)|緊急時の事業継続・早期復旧へ向けた手順や対策
BCP(Business Continuity Plan)は、緊急事態が発生した際に優先度(重要度)の高い業務を止めずに継続するための具体的な手順や体制をまとめた計画書です。地震や台風によって施設の運営やインフラに影響が出た場合でも、事業を止めないために必要な業務を進めるうえでの流れを事前に定めておく必要があります。
BCPはあくまで「事業継続に向けた計画書」であり、BCMの仕組みにおけるツールのひとつです。策定するだけでは意味がなく、定期的な見直しや訓練によって実務レベルで使える内容になるまで改善を続ける必要があります。
BCPは、BCMの実行を支える「道しるべ」として機能する大切な要素です。
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2.企業がBCMを策定するべき理由

企業がBCMを策定するべきと言われる背景には、主に以下の理由があります。
・災害や緊急事態発生時の対応方法を明確にしておくため
・事業の中断リスクを最小限に抑えるため
・企業への信頼に繋がるため
・自社の従業員や顧客を守るため
企業がBCMを実施すべき理由は、まさに「あらゆる災害に耐える体制を整えること」です。想定される被害を洗い出し、全社一体となって立ち向かう準備をしましょう。BCMの具体的な実施手順については、次の段落で解説します。
3.BCMの実施手順5ステップ
BCMの実施手順を簡潔にまとめると、下記のとおりとなります。
1.基本方針を決める
2.事業への影響度やリスクを分析する
3.影響やリスクへの対策を計画する
4.マニュアルの整備と教育・訓練を実施する
5.人事異動や事業内容の変化に応じて定期的に見直す
各ステップで知っておくべきポイントも解説します。BCMを何から始めたら良いかわからず迷っている方は、具体的な手順から実施のヒントを見つけましょう。
①基本方針を決める
まずは、BCMの基本方針を決めましょう。BCMの基本方針は「災害時にもこれだけは何がなんでも守る」事項を含めることが大切です。経営層と定期的に認識合わせしつつ、下記のように非常事態の対応方針を設定する必要があります。
・災害発生時にもコア業務を止めない
・サーバーダウン時も提供するサービスの質を低下させない
・感染症拡大時も営業体制に極力支障をきたさない
BCMの基本方針を決める段階では、会社全体における意義と実現可能性をもとに内容を詰めることが大切です。曖昧なスローガンではなく、明文化した指標を設けましょう。
②事業への影響度やリスクを分析する
BCMの基本方針が固まったら、次は事業への影響や想定されるリスクを分析します。想定されるリスクを洗い出したあとは、下記の考え方をもとにそれぞれの重要度を比較することが大切です。
・業務の重要度
・必要な人・物・お金のリソース
・事業中断による損失
リスク分析では自然災害のほか、サイバー攻撃などITに関するリスクの発生確率や被害も想定することが大切です。現状のリスクに対する脆弱性を評価し、対応の優先順位を決めましょう。
③影響やリスクへの対策を計画する
事業への影響度やリスクの分析の次は、それぞれに向けた対策を計画します。リスクへの対策方法を考えるときは、下記の方法を参考にしてください。
・サービス提供および商品製造における代替拠点の確保
・業務の一時代替要員の確保・指定
・重要データにおけるバックアップ体制の確保
・連絡手段の多重化による取引先との連携など
リスクへの対策を考えるときは、従業員一人ひとりが具体的にどう動くかを決めることがポイントです。「いつ誰が何をすべきか」を内容に含め、業務中断の度合いやリスクを最小限に抑える体制を整えましょう。
④マニュアルの整備と教育・訓練を実施する
BCMの内容がまとまったら、マニュアルの整備や従業員への教育・訓練を行います。従業員一人ひとりが緊急時に迷わず動けるよう、定期的な訓練やシミュレーションしましょう。
BCPを機能させるためには、具体的な手順をまとめたマニュアルの作成が必要不可欠です。「どの事態のときは誰がどの手順で対応するか」を見える化し、関係者全員に周知する取り組みが求められます。
またBCPを社内へ浸透させるには、定期的な訓練も欠かせません。定期的に行われる会議の時間を活用し、BCMやBCPの関連情報を共有する場を設けましょう。
⑤人事異動や事業内容の変化に応じて定期的に見直す
BCMの内容は、一度文書化して終わりではありません。人事異動や事業内容など、会社の変化に基づいて定期的に見直すことが大切です。
一度策定したBCMは、社内だけでなく時代の変化とともに機能しなくなるリスクがあります。特に下記の事態が起きたときは、BCMの存在そのものが忘れられないよう注意が必要です。
・人事異動
・拠点の移転および拡大
・事業の拡大
・新規事業の開拓
・社会情勢の変化など
BCMは年に1回程度の見直しを基本としつつ、変更があったタイミングで都度対応できる体制を整えましょう。継続的なアップデートこそが、存在意義のあるBCMの維持につながります。
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4.BCMの実施例を業種別に紹介

下記3つの業種におけるBCMの実施例を紹介します。
・IT業界
・医療業界
・製造業界
それぞれの業界において、BCMは「何にどのような価値を生み出しているか」をチェックしましょう。
●IT業界|クラウドのデータバックアップやデータセンターの多重化
IT業界における多くの企業では、自然災害やサイバー攻撃へ向けたBCMやBCPの策定が行われています。特に膨大な情報を扱うデータセンターやサーバールームを運営する企業では、非常事態に備えて下記の施策が実施されています。
・クラウド環境への定期的なデータバックアップ
・遠隔地における複数のデータセンター立ち上げ(多重化)
・サイバー攻撃を想定した侵入検知システムやウイルス対策ソフトの導入
・サーバーダウン時の復旧手順や対応フローの明文化
近年では生成AIを搭載したGPUの普及により、障害発生時への取り組みや安定した電源供給体制に力を入れる企業が増えています。取り扱う製品やサービスによっては、BCMの一環として様々なサイバー攻撃から顧客の情報資産を守る体制が構築され続けています。
●医療業界|診療継続へ向けた非常用電源の確保
医療業界では、多くの施設で非常事態発生時の診療継続を目的に非常用電源が導入されています。地震や落雷による停電時にも患者の命を守るために必要不可欠な装置を稼働させ続けるには、常に設備への給電を行える体制の確保が必要です。
・人工呼吸器
・スマートベッド
・生体情報モニター
・透析装置
・医療用冷蔵庫など
また多くの病院やリハビリ施設には、災害時に備えて備蓄燃料や発電機といった装置が備えられています。電気を使う装置は、いざというとき確実に稼働できてこそ存在価値があるものです。
医療施設には、BCMの一環として非常用電源を導入し、非常時にも医療機能を維持する体制づくりが求められます。
●製造業界|主要工場における生産機能の分散化
製造業界では、BCMの一環として生産ラインの停止による納期遅延を防ぐための取り組みが行われています。自然災害によって主要工場が被災した場合も事業を継続するため、多くの企業で生産機能の分散化が進んでいます。
重要部品や原材料の調達先を1社に依存しない「複数サプライヤー体制」や、倉庫・物流網の多重化もBCM対策の一環です。リスクマネジメントへ向けた投資として生産ラインそのものを増やしたり、新たな拠点を開設したりする企業も数多く見られます。
近年では国内外に複数の製造拠点を持ち、どちらかの工場が稼働できない時に代替生産を行う体制を構築する企業も増えています。企業における生産機能の分散は、事業の安定性を高め、取引先や顧客からの信頼獲得や競争力強化にもつながる重要な取り組みです。
5.BCMを実施するときのポイント
BCMを実施するときは、下記5つのポイントを意識しましょう。
・経営陣が率先して策定に関与する
・事業存続に関わるタスクを最優先にする
・現実的なシナリオを設定して体制を整える
・従業員への教育・訓練を通じて実効性を高める
・対策に必要な道具を揃えておく
それぞれの注意点や具体的な行動指標も紹介します。BCM実施時に求められる役割を押さえておきましょう。
●経営陣が率先して策定に関与する
BCMの実施は、経営陣が率先して行うべきです。特に部門や拠点責任者の方は「自分は現場に行かないから関係がない」と考えず、リーダーシップをもって取り組む必要があります。
経営層が方針を明確に打ち出すことで、全社的な危機管理意識を向上させることが可能です。。組織構造上における指揮命令にも組み込めるため、不信感による業務の不履行も防ぎやすくなります。
経営陣の方々は、BCMを形だけの取り組みだけでなく、経営戦略の一環としてBCMを位置づけることが大切です。
●事業存続に関わるタスクを最優先にする
BCMを策定するときは、まず事業存続に関わるタスクから優先的に実行できる仕組みを作る必要があります。事業存続に関わるタスクとは「止まったら会社の存在意義を失いかねない業務」そのものです。
簡単に例えると、メーカーなら自社製品を製造できる拠点、医療施設なら治療用の装置が挙げられます。特に基幹システムや顧客対応窓口は、業種によって数時間の停止でも大きな損害に繋がりかねません。
BCMを策定するときは、まずそれぞれの部署において行われる業務を洗い出しましょう。洗い出した内容をもとに、影響度の高い業務から順にマーカーをつけることで、対応の優先順位を判断しやすくなります。
●現実的なシナリオを設定して体制を整える
BCMの策定には、現実的なシナリオの設定が欠かせません。「できるかぎり早く」などあいまいな目標を定めず、下記のように、具体的な数値や時間を含むシナリオを設定しましょう。
・震度6以上の地震が発生
・システム障害でサーバーが48時間停止
・停電により直近12時間は電気設備の使用不可など
上記のシナリオをもとに、業務ごとの重要度や影響範囲を分析しましょう。結果からそれぞれ対応へ向けた優先順位(RTO)を明確に定め、現場への影響を最小限に抑えるための取り組みが大切です。
●従業員への教育・訓練を通じて実効性を高める
BCMは、経営陣を含む関係者全員に周知してこそ意味があるものです。たとえ内容が整っていても、現場で働く従業員が認知・理解していなければ機能しません。
BCMを策定したら、全ての従業員へ向けて定期的に教育・訓練を実施する必要があります。特に4月・10月など多くの新人が入社するタイミングでは、研修の一環としてBCM・BCPの授業を設けると良いでしょう。
外国籍の従業員が多い現場では、日本語だけなく英語・中国語など様々な言語で閲覧できるマニュアルを用意しましょう。現場で働く全ての人が「誰が何をいつどこで行うか」を把握できる仕組みづくりが大切です。
●対策に必要な道具を揃えておく
BCM対策をよりスムーズに行うためには、必要な道具を事前に揃えておく必要があります。「必要な道具とは?」と疑問を抱く方は、下記の考え方を参考にすると良いです。
・〇〇が発生したら何ができなくなるか?
・〇〇の影響で何をする必要が出てくるか?
・〇〇により何が手に入りにくくなるのか?
「〇〇が発生したら何ができなくなるか?」の例として、台風発生の場合は停電、地震の場合は交通インフラへの影響が考えられます。ポータブル電源やモバイルバッテリーを準備したり、徒歩でも行ける避難ルートを確保したりといった工夫が大切です。
「〇〇の影響で何をする必要が出てくるか?」の例としては津波による高台への避難や、感染症拡大時におけるリモートワークの実施が挙げられます。災害による不自由な環境下での対応策を具体的に押さえておきましょう。
「〇〇により何が手に入りにくくなるのか?」の例では、災害発生時に入手困難となるものについて考える必要があります。食料や日用品をあらかじめ防災パックに完備し、もしもの時に慌てないための対策を立てることが大切です。
6.BCMにJackery(ジャクリ)のポータブル電源を活用しよう
BCMの策定には、Jackery(ジャクリ)のポータブル電源がおすすめです。ポータブル電源とは、非常時においてスマホや電化製品への給電ができる電源装置を指します。持ち運び可能なため、移動を要する緊急時の対応でもスマホや無線機への給電を効率よく行えます。
Jackery(ジャクリ)は、2025年時点で13年間・累計500万台以上の販売実績がある、アメリカ発のポータブル電源ブランドです。ポータブル電源は国内サポートも手厚く、購入後最大5年の無料保証を用意。コンパクトで扱いやすく、BCMで想定される災害時の備えとしてもおすすめです。
BCP・BCMにおける非常用電源の導入を検討中の方は、Jackery(ジャクリ)ポータブル電源も候補に加えてみてください。
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7.BCMに関してよくある質問
最後に、BCMに関してよくある下記の質問へ回答します。
・BCMでは何を想定して対策を進めればよい?
・多くの企業でBCMやBCP策定が進まない理由は?
・BCMの実施で活用できる助成金はある?
それぞれの質問に対する回答をチェックし、BCMに対する知見を深めましょう。
●BCMでは何を想定して対策を進めればよい?
BCMでは、下記など様々な災害によるシナリオを設定する必要があります。
・地震・台風・津波による被害
・洪水・停電などの自然災害による影響
・新型インフルエンザなど感染症の流行
・サイバー攻撃の発生など
BCMを策定するときは、自社にとってどのリスクが最も重大かを分析することが大切です。被害される被害の規模やリスクをもとに、優先順位をつけて対策を進めましょう。
●多くの企業でBCMやBCP策定が進まない理由は?
多くの企業でBCMやBCP策定が進まない原因として、下記の理由が挙げられます。
・普段の業務が忙しすぎて実施する余裕がない
・どこから手をつければよいか分からない
・緊急時が来ないと実感できない
・BCMに関して知見を持つ人材がいない
BCMにおけるメリットのひとつとして「会議室と筆記用具があれば手をつけられる」といった特徴もあります。まずは定例会議の議題のひとつとして組み込んだり、必要な道具から調達したりといった工夫が大切です。
●BCMの実施で活用できる助成金はある?
結論、BCMの実施に活用できる助成金はあります。たとえば東京都中小企業振興公社の「BCP実践促進助成金」は、物品や設備導入にかかる費用の一部を国が補助する制度です。
中小企業が策定済みのBCP(事業継続計画)を実行に移すために作られた制度で、下記の道具や設備の導入費用も補助対象となります。
・発電機
・ポータブル電源
・衣食住に関する備蓄品
・耐震・防災用品など
BCP実践促進助成金にの詳細は、下記のページでチェックしてみてください。
まとめ
BCM(事業継続マネジメント)は、緊急事態発生時も中核的な事業をストップさせずに継続させるための仕組みです。経営戦略として位置付けられることも多く、一部に対策方針を書類にまとめたBCP(事業継続計画)があります。
BCMを導入することで、企業の信頼性やリスクへの耐性を高めることが可能です。想定される災害への取り組みを強化すると、結果的に取引先や顧客からの評価向上にもつながります。
BCMに盛り込むべき内容は、医療やITなど業界・職種ごとにそれぞれ異なります。様々なシチュエーションに備えて、自社に合った現実的な体制づくりを行いましょう。
 
   
                                                                                 
                                                                                 
   
                                                                                 
   
                                                                                 
                                                                                 
                                                                                 
                                                                                 
                                                                                 
   
                                                                                 
                                                                                 
   
                                                                                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