冬の停電対策に最適なポータブル電源とは?おすすめの選び方を防災の専門家に聞く
日本で停電が増えている理由とは?
日本で停電が増えている理由とは?
――停電の原因は自然災害など色々ありますが、最近の災害対策の傾向はありますか?
「最近の傾向としては『在宅避難』が推奨されています。その背景にあるのは、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震などで、亡くなった人の原因を調べたところ、建物の倒壊や津波など直接的な被害を生き延びた後に、避難生活の中で亡くなってしまう『災害関連死』が増えている点にあります」
――それは避難所生活に問題があるのでしょうか?
「避難所といっても特別な設備があるわけではなく、小学校の体育館に段ボールを敷いただけなど、快適とは言えない環境がほとんどです。そのため、衛生面やストレスなど様々な要因で、特に高齢者の方が亡くなっているケースが増えています。その一方で、予算の問題もあり、避難所の設備をすぐに改善することも難しいのが現状です。その中で『災害関連死』を減らすために、自分の家で快適に避難生活を送る『在宅避難』が推奨されているのです」
――何か起きたら避難所に行くのが当たり前だと思っていました
「電気が止まっている時は、避難所も止まっています。避難所は行政が場所を指定し、毛布や食料などを備蓄していますが、行政が行うのはそこまでで、実際に避難所を開いて運営するのは、避難した人たちです。また災害直後から避難所は開くのですが、被災地以外から物が運ばれるのは4日目以降です」
――なぜ4日目なのでしょうか
「災害発生から72時間を超えると、生存率が急激に低下するため、発生から72時間は人命救助が最優先されます。生き残った人への支援は72時間以降、つまり4日目からとなります。そのため最低でも3日間は自分たちで生き延びなくてはいけない。自宅が無事であれば、まずは自宅で避難生活をした方が良いというのが、現在の災害対策の傾向です」
――そうなると自宅の備えが重要になりますね
「まず家を潰さない、沈めない、しっかり守ることが大事です。そのうえで3日間生き延びるための備えが重要になります。その備えも最近は変化しています。かつて備蓄品には、ロウソクがありましたが、いまは長時間使用できるLEDライトがあるため、火災の危険性があるロウソクは推奨されていません。このように備蓄品も変化しているのです」
――最近の備蓄品の傾向としてはどのようなものがありますか?
「以前は水、食料と言われていましたが、いまは個人が持ち運びできる電気として、ポータブル電源が登場し、非常に注目を集めています。私がやっているYoutubeや音声プラットフォームの『Voicy(ボイシ―)』などでもポータブル電源を紹介する回は再生回数が多く、みなさんが高い関心を持っていることが分かります」
――災害時のポータブル電源のメリットは何でしょうか?
「かつては避難する=「我慢する」というイメージでしたが、災害時でも電気が使えるとなれば、在宅避難をしている時でもかなり快適に過ごすことができます。また災害時には貴重な情報源となる、スマートフォンを10回以上充電できるポータブル電源は、1家に1台持っているべき防災アイテムといえると思います
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防災に電気の備えが必要な理由
防災に電気の備えが必要な理由
「停電対策には大きく2つの方向性があります。1つ目は”電気の機能を準備する”こと。これは例えば、冷房が使えなくなった時に備えて、保冷剤をたくさん用意するなどです。もう1つが”電気そのものを準備する”ことです。これは乾電池やモバイルバッテリー、太陽光発電、ガソリン発電機、住宅用蓄電池、ポータブル電源などが挙げられます」
――そうした備えの中で重要なポイントはどこでしょうか
「スマホ・ガラケーの充電です。防災対策においてモノの準備と合わせて、情報を得る手段を確保することは、命にもかかわる重要なことです。どこに避難所があるのか、災害はいまどんな状況なのか、それらの情報を得るためのスマートフォンの電源を確保することは必須といえるでしょう」
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――「電気そのものを準備する」停電対策についてもう少し教えていただけますか?
「先ほどお伝えしたスマートフォンの充電であればモバイルバッテリーでも代用できますが、停電時にWi-FiやPCを活用するには、コンセントが使えるポータブル電源が必要になります。また冬の停電対策としては、カセットガスストーブやカイロなど電気を使用しない暖房器具もありますが、ファンヒーターや電気毛布、こたつなど電気で動くものがあった方が確実に便利です。そのため、可能であればポータブル電源があった方が良いでしょう」
――確かに寒さ対策でも電気の有る無しは重要なポイントですね
「また意外と知られていないですが、災害時に水道が無事であっても停電していれば、電気で動くウォーターサーバー、タンクレストイレ、浄化槽、井戸ポンプ、さらにガス器具などが止まってしまう可能性もあります。その他にも、アクアリウムのポンプやペット用のヒーター、自動給餌器など、人間以外の生命活動にも電気が必要になるのです」
防災のためのポータブル電源の選び方
防災のためのポータブル電源の選び方
――防災対策のためにポータブル電源を選ぶ場合は何を基準に選べばよいのでしょうか?
「パターンとしては3つあると思います。1つ目が、スマホの充電用に欲しいケース、2つ目は家電が使える容量で選ぶケース、3つ目は使う機器と動かしたい時間が決まっているケースです」
――スマホ充電の場合はどのように選ぶべきでしょうか?
「1日1回フル充電する場合は約5000mAhが必要になります。さらに最大7日間の停電に対応すると考えると、1人だと35,000mAh、5人家族なら175,000mAhが必要になります。Jackery製品でいえば、『Jackery ポータブル電源 708』は最大容量が192,000mAhですので、5台のスマホを7日間はフル充電することができます」
――家電が使える容量で選ぶ場合はいかがでしょうか?
「基準として考えるべきは、家の中の壁にあるコンセントの定格出力です。家のコンセントは100V×15Aのため、「1,500W」といえます。
そのため、1500W以上の出力を得ることができれば、家で使っている家電は、接続時間はともかく、何でも動かすことができます。
Jackeryのポータブル電源で言えば『Jackery ポータブル電源 1500』(1,800W)と『Jackery ポータブル電源 2000 Pro』(2,200W)を選べば、とりあえず家電を動かすことができます」
――機器と動かしたい家電が決まっている場合はどうでしょう?
「これは計算式で考える必要があります。例えば、LED照明(60W)を8時間、ノートPC(25W)を12時間、扇風機(60W)を24時間、冷蔵庫(250W)を24時間使いたい場合は、7,740mAhが必要となります。このように使いたい家電と時間が分かれば、必要なポータブル電源の容量が把握でき、その数字を基準に選べばよいでしょう」
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――その他にポータブル電源を選ぶポイントはありますか?
「容量については160Wh(43,243mAh)以上は航空機での移動ができないので注意が必要ですね。また電気用品安全法の基準に適用しているかは、PSEマークの有無で分かります。ACアダプターを使って充電する場合、PSEマークがあるかは必ず確認した方が良いでしょう。さらに家電を使う場合は波形が『正弦波』であることも確認する必要があります。それ以外の波形の場合は故障の原因になります」
停電時の発電方法としてのソーラーパネル
停電時の発電方法としてのソーラーパネル
――停電時に発電する方法についてはいかがでしょうか?
「停電時でも発電する方法としては、住宅設備であれば住宅用ソーラー+蓄電池、エネファームがあります。さらに自動車であれば電気自動車やプラグインハイブリッド車の電力であるPHEV+V2Hを活用する方法。もう一つが持ち運べるものとして、カセットガス発電器、ガソリン発電機、ソーラーパネルがあります。住宅設備と自動車は導入できるならオススメですが、それなりの導入費用がかかります。ガソリン発電機やカセットガス発電器は、燃料の備蓄とメンテナンスが大変すぎます。その点、ソーラーパネルは太陽に向かって開いて置くだけで発電ができるので、非常にエコで取り扱いやすい製品といえるでしょう」
――ソーラーパネルのメリットを教えてください
「太陽が出ていれば無限に使用できるという点ですね。ガソリ
――ソーラーパネルとポータブル電源の組み合わせについてはいかがでしょうか
「ソーラーパネル単体では家電を動かすことができないため、家電を使いたい場合は、パネルからポータブル電源に充電して、ポータブル電源のコンセントから家電につなぐ必要があります。ポータブル電源を経由することで、太陽光で作った電気を溜めておくこともできるため、ソーラーパネルとポータブル電源の組み合わせは、災害時にも非常に有効だといえます」