【ユーザーインタビュー】Jackery 5000 Plus×自動切替分電盤(ATS)が支える山守人たちの日常 |岡崎哲三さんの登山道再生の流儀
自分らしい生き方を楽しむ人々と、その暮らしを支えるJackery製品の魅力に迫るユーザーインタビューシリーズ。
今回は、大雪山・山守隊の隊長として「近自然工法」という発想に基づいた登山道整備や山の保全に尽力する岡崎哲三さんを訪ねて、北海道の大雪山国立公園内にある大雪高原温泉ヒグマ情報センターへとやってきました。ここは大雪山の中でも一際美しい自然に囲まれた場所ですが、山奥にあるため電力が届かないという欠点がありました。そこで今年から「ポータブル電源 5000 Plus」と、自動切替分電盤(ATS)による本格的な家庭・施設向け電源システムを導入したことで、完全なオフグリッドを実現。山での生活と保全、そのために欠かせない「電気のある日常」の大切さについて、お話を訊きました。
人が山を歩くと何が起きる?
人が山を歩くと何が起きる?
北海道の中央部に広がる大雪山は、20座近くからなる標高2,000m級の山々の総称。その東側、白雲岳の麓にヒグマ情報センターはあります。ここは高原温泉沼巡り登山コースの管理と、白雲岳周辺の登山道整備の拠点となっており、高原温泉沼巡り登山コースを歩くには、必ずここで15分程度のレクチャーを受けなければなりません。
岡崎哲三さんをはじめとするスタッフたちは、日々集めているヒグマの痕跡から行動を予測して登山者に伝え、ヒグマと人間の軋轢が生まれないようにする大事な役割を果たしています。しかし今年は、異常な行動をとるクマの増加に伴ってルートを閉鎖することに。
「登山者にヒグマやここの自然のことを直接伝えられるのが、ここで働くスタッフの役割でありやりがいでもあったのですが、今年は残念ながらSNSの情報発信しかできていません。来年のことも見据え、コースを閉鎖せずにうまくできるシステムを行政と一緒に考えているところです」
子どもの頃から野山で遊び、20歳の頃から山小屋の管理人バイトとして山の保全活動を始めた岡崎さん。今はボランティアの方々と一緒に大雪山の管理・登山道整備をする「山守隊」も組織しているほか、山が雪に閉ざされている時期には全国の国立公園に足を運んで、山の整備についての講演や、現場でレクチャーしながら一緒に整備活動に励んでいます。
そもそも山を「管理する」とはどういうことなのでしょう。登山が山に及ぼす影響について、岡崎さんは次のように説明します。
「まず人が山の中を歩くと、踏まれた植物は育たなくなり、次第に植物の根が支えていた土壌が露わになって裸地になります。その生態系が失われた状態の地面を私たちは“登山道”と呼んでいます。裸地になったところには雨水が集中しやすく、少しずつ土壌を削って溝状に掘れていきます。そしてひとたび豪雨が起きれば、そこが水路となっていっぺんに崩落してしまうのです。特に大雪山のような火山灰土壌は水に流されやすいので、薄い表土が削れたらたちまち崩れ始める。それは自然には直りません。残念ながら登山者はおろか、山を管理する人ですらこのことを理解できていないのが現実です」
どんな場所でも“日常と変わらない安心”を
利用して崩れてしまった登山道は元に戻して初めてまた利用できるようになる。だから利用に対して保全が追いつかないときは葛藤がありますねと岡崎さん。しかし、大雪山はまだまだ管理が行き届いていないと言います。
「私一人で頑張ったとしても、崩れの程度によっては1日5mしか直せません。大雪山は総延長300km以上の道があり、何十kmにもわたって崩れているため、自分一人では一生かけても無理です。なので、そういうことを一般の方々がちゃんと分かるように伝えていく方向にシフトしました。なぜ管理が必要なのか、そして自然というのはタダではないんだというところまで日本人のリテラシーを上げていく、そのきっかけを作ることが私たちの仕事だと思っています
どんな場所でも“日常と変わらない安心”を
今回ヒグマ情報センターを訪ねたのは登山シーズン終わりの9月末。大雪山は日本一早い紅葉の名所として知られ、ちょうど見頃を迎えていました。季節ごとに違った表情を見せてくれる大雪山において、岡崎さんが好きな季節は冬だと言います。
「冬はなんだか山が休まってる感じがしてホッとするんです。利用者も少なくなるし、雪が積もれば土壌は削れないのでよかったなって。自然は案外脆くて、多くの人が自然の中に入れば簡単に壊れてしまう。その一方で、ここにある美しい風景を多くの人に見ていただき、自然との関わりを持ってほしい気持ちもあります。一番怖いのは無関心ですから」
そのためヒグマ情報センターの夏は例年忙しい。センターには毎日スタッフ2名が常駐し、多い時には10人程ここで寝泊まりをするそうです。生活するとなれば冷蔵庫や電気ポット、掃除機に洗濯機も使う。それにスタッフ間で使う無線やスターリンクでのインターネット利用にも電気は不可欠。しかしここは電力も供給されていない山奥のため、電気はどうしているのでしょう。
「昨年までは近隣の温泉宿の大雪高原山荘さんが発電した電気を売ってもらっていたのですが、今期は大雪高原山荘さんが営業停止を決めたことから自分たちで電気を賄わなければならなくなり、大型の発電機を外に設置したんです。ですが発電機の使用には時間制限があり、夜間は止めているのですべての電気がストップしてしまう。北海道はエキノコックス症を防ぐために一度ポンプで汲み上げて濾過装置に通す必要があり、夜は水も出なければトイレも使えない生活でした。それで数週間後にJackery 5000Plusを導入したんです」
岡崎さんが導入した5000 Plusは定格6000Wの高出力でどんな電子機器にも使える、Jackery 製品の中で最高容量を誇るポータブル電源。つまり家の中の電化製品すべてを賄えるため、5000 Plusは分電盤とセットにして用いることでその本領が発揮されます。停電が起きると自動でJackeryのバックアップ電源に切り替わるのですが、ヒグマ情報センターは環境省の建物のため施工の申請手続きが必要だったため、まず先に通常のポータブル電源として5000 plusを活用することに。
「夜に電気が使えるだけでも十分助かりましたが、1カ月半遅れで分電盤が付いてからは、昨年までとほぼ変わらない生活に戻りました。電灯がついて、蛇口をひねれば水も出て、建物のどのコンセントからも電気が取れるので、枕元で横になりながらスマホの充電もできる……、当たり前だと思っていたことがこんなにもありがたいものだったのかと再認識できたのは大きかったですね」
朝起きてバッテリー残量が減っていれば、窓の外までケーブルを伸ばしてソーラーパネル、もしくは発電機で充電をする。5000 Plusと自動切替分電盤(ATS)を導入したことで、岡崎さんはもうひとつ再認識できたことがあると言います。
「静けさというのも自然の持っている価値なんだと、発電機を回す時間が減ったことで気付くことができました。発電機の音はやっぱりうるさいですし、自然は素晴らしいと言いつつ、軽油をガンガン燃やして電気を作るというのもどうなんだろうとは、常々考えていたんですよね。ソーラーパネルの山での使い道はまだまだ伸び代があるでしょうね」
生態系を織りなすように手を加えていく
生態系を織りなすように手を加えていく
岡崎さんの登山道整備は、「近自然工法」という発想に基づいて実践されています。これは自然環境の保全と人間の利便性の両立を目指す土木工法で、もともとは近自然河川工法と呼ばれるスイス生まれの河川工事の技術。それを「川の外科医」と呼ばれた福留脩文さんが日本に持ち込み、全国各地に広めていきました。岡崎さんも福留さんからバトンを渡された一人。山小屋で働いていた20代前半の頃に福留さんと出会い、その教えを登山道整備に活かすようになります。
「近自然工法には『生態系の底辺が住める環境を復元する』という定義があって、そのために大事なことは安定した土壌環境をつくることなんです。歩きやすい足場を組むのではなく、時間が経つにつれて土壌が溜まっていくように石や木を組んでいけば、そこに微生物が入り込んで、植物が育つようになり、その根が土壌を支えてくれるようになります」
それは自然が本来持っている、崩れた場所を自ら修復していくプロセスを模倣することでもあると言います。自然の中に答えがあり、その答えはひとつではない。岡崎さんが最初に福留さんから教わったのは、そんな禅問答のような教えでした。近自然工法とは直す方法ではなく、自然の見方を変えていく手段なのだと。自然を師に、岡崎さんはいつしか自分なりの解釈で登山道整備にあたるようになります。
「最初に教わったのは周辺にある石や木を使って直すことでしたが、私の場合は自然素材以外のものも使います。例えば木も大きな石もない大雪山の高山帯では強化プラスチックを使っています。サラサラの砂や石しかない火山灰土壌なので、メッシュ状のコンテナに入れてやることで土壌が安定し、やがて植物が生えるようになります。なるべく生態系に合わせた自然物を使いたいですが、大事なのはちゃんとその周辺の生態系を織りなすように手を加えていくことです」
この近自然工法の考え方は、電力にも通じるものがあるのではないでしょうか。いかに自然に溶け込むような持続可能な形を実現できるのか。送電線や発電機の設置ではなく、周囲の生態系へのインパクトを抑えられる電源システムが確立すれば、日本の山を取り巻く環境は大きく変わっていくかもしれません。
現在、多くの山小屋はランニングコストや荷揚げ用のヘリコプター代の高騰、登山者の減少などによって経営難に陥っています。そうなると後継者も現れないうえ、各山小屋が自社負担で取り組んできた登山道整備を継続していくことも難しくなっていきます。あらゆる問題が連鎖的に起こっている今この状況を、岡崎さんはどう考えているのでしょう。インタビューの最後に、今日本の山が抱えるこれらの問題とその展望について尋ねてみると、「希望しかないと私は思ってるんですよ」と、少し意外な答えが返ってきました。
「というのも、山に入るとこの風景があるんです。これを見て汚いと思う人は誰もいませんよね。誰かに見せたくなるような美しいものがここにある、その本当の価値にみんなが気づけば、それを守っていくための仕組みというのは自ずとできてくるはずです。道が崩れてきたら自分たちで直さなきゃねって、そうやって当たり前のことのように考えられる人が増えていくと思うんです。僕にできるのはきっかけを作ることですが、ほんの少しの弾みですべてが大きく変わっていくと思うんです」
岡崎さんが取り組む登山道整備は、目に見えた結果はすぐには出ないかもしれません。一度崩れた場所に高山植物が再び咲くまで50年はかかるとも言われています。
「自分がいなくなった後にいい景色が広がっていたらいいな」そんな時間軸で自然を見つめる岡崎さんは、きっと今日もどこかの山の健康を願って、手を動かし続けていることでしょう。
岡崎哲三
約30年前から大雪山で働き始め、山小屋管理人やガイドをしつつ、25年前にもアルバイトとしてヒグマ情報センターも勤務。登山道整備に興味を持ち実践していたところ、2004年に福留脩文氏が伝える「近自然工法」の発想に出会う。この発想を実践できるよう2011年に合同会社北海道山岳整備という山岳管理の会社を立ち上げ、全国の国立公園で登山道整備の実践や指導を行う。大雪山では登山道整備業務や山小屋管理業務を請けつつ、2020年からヒグマ情報センターの管理を受注し高原温泉沼巡りコースの管理と大雪山のヒグマ対策を行う。一般社団法人 大雪山・山守隊代表。
Jackery ポータブル電源 5000 Plus+ATS
| 項目 | 数値 |
| 容量/定格出力 | 5040Wh /6000W |
| 満充電時間 |
ACコンセント充電:4.1時間、ソーラーパネル:5.5時間(1200W) |
| 出力ポート数 | AC出力×4、USB-C出力×2、USB-A出力×2、シガーソケット出力×1 |
| 保証期間 | 5年間 |
コメント