1.地震発生から津波到達までの時間はどのくらい?
地震の発生場所や規模によって、津波が到達するまでの時間は大きく変わります。まずは、時間の目安や注意点を見ていきましょう。
●大地震なら10分以内で到達する可能性がある
日本の沿岸部では、海底で大きな地震が発生した場合、最短で数分のうちに津波が到達することがあります。
過去の事例を見ると、2011年の東日本大震災では、地震発生からわずか3分後に第一波が到達しました。地震の規模や発生場所によっては、避難する時間がほとんどない場合も少なくありません。
とくに震源の浅い大地震が発生した場合、津波は私たちが考えるよりも速く到達します。「地震が収まってからゆっくり避難すればいい」と思っていると、津波に巻き込まれる危険性が非常に高くなるのです。
●津波は「30cm」でも死の危険あり!注意報や警報が出たらすぐ逃げよう
津波の高さが30cmほどでも、その破壊力は想像以上に強く、成人が立っていられないほどの力があります。命を守るためには、気象庁による以下の注意報・警報が出たらすぐ逃げましょう。
・津波注意報:海の中や海岸付近に危険がおよぶ場合(0.2m~1m)
・津波警報:陸地に津波がおよぶ恐れがある場合(1m~3m)
・大津波警報:甚大な被害が予想される場合(3m超)
ただし、明らかに大きな地震のときに海の近くにいたら、注意報・警報が出ていなくても高台へ逃げてください。「津波が来るかもしれない」と思ったら、迷わずその場から離れましょう。
2.過去の事例から学ぶ津波到達時間

過去に発生した地震と津波の事例から、どのくらいの時間で津波が到達したのかを見ていきましょう。
●能登半島地震では3分後に最初の津波が到達
2024年1月1日の16時10分に発生した能登半島地震では、わずか3分後の16時13分に富山県へ第一波が襲来しています。
この地震では、石川県輪島市で最大1.2メートルの津波を観測。日本海側の広い範囲でも津波が確認されました。地震発生からの時間が非常に短かったため、警報が出る前に津波が到達した地域もあります。
●東日本大震災では約3〜45分後に大津波が到達
2011年3月11日14時46分に三陸沖で発生した東日本大震災では、地震の規模や震源からの距離によって、津波の到達時間は地域によって大きく異なりました。
・岩手県宮古市:地震発生から約40分後の15時26分に高さ8.5m以上の大津波
・宮城県石巻市鮎川:約40分後の15時26分に高さ8.6m以上の大津波
・福島県相馬:約65分後の15時51分に高さ9.3m以上の大津波
また、茨城県大洗市では約126分後の16時52分に4.0mの津波が到達しました。震源から離れるにつれて津波の到達時間は長くなりますが、いずれの場合も避難のための時間はそれほど多くありません。
参考:気象庁「津波の概要」
●スマトラ沖地震では約1時間後に津波が到達
2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震では、インドネシアのスマトラ島北西部沖を震源とするマグニチュード9.1の巨大地震により、インド洋沿岸の広い範囲で大規模な津波被害が発生しました。
この地震による津波は、震源に近いインドネシアとマレーシアには1時間以内に到達。ミャンマーには約2時間後、インドとスリランカには約8時間後に津波が到達したと推定されています。

引用:日本学術振興会
スマトラ沖地震津波の最大の特徴は、インド洋沿岸諸国に津波早期警戒システムが整備されていなかったこと。多くの国で津波の到達を予測できず、結果として22万人以上もの死者・行方不明者を出す大惨事となりました。
●明治三陸地震では約35分後に津波が到達
1896年(明治29年)6月15日に発生した明治三陸地震は、日本の観測史上最大級の津波災害です。東北地方の三陸沖を震源とするマグニチュード8.2〜8.5の地震により、最大で38.2メートルの津波が発生しました。
この地震の特徴は、地震そのものの揺れは比較的小さい震度2~3程度だったにもかかわらず(震度2〜3程度)、非常に大きな津波が発生したことです。
地震発生から約35分後に津波が三陸沿岸に到達し、岩手県を中心に約2万2千人の犠牲者を出しました。当時は津波に対する警戒意識が低く、地震の揺れが小さかったこともあり、多くの人が避難せず被害に遭っています。
●昭和三陸地震では約30分後に津波が到達
1933年(昭和8年)3月3日に発生した昭和三陸地震は、三陸沖を震源とするマグニチュード8.1の地震です。地震発生から約30分後に津波が三陸沿岸に到達し、最大の津波高さは約28.7メートルに達しました。
津波の被害は岩手県の沿岸部を中心に広がり、特に田老町(現在の宮古市田老地区)では集落の殆どが流失する壊滅的な被害を受けています。
3.南海トラフ地震の津波到達時間・被害のシミュレーション
南海トラフ地震は、今後30年間のスパンで発生する可能性が高い巨大地震として知られています。東海から九州の太平洋沖に位置するプレートの境界を震源とする地震です。
引用:内閣府防災情報のページ「南海トラフの巨大地震の想定震源断層域」
地震の規模や津波の高さ、到達時間などについて、国や自治体によるシミュレーションが行われており、その結果は防災対策に活かされています。詳しく見ていきましょう
●南海トラフ地震では2〜3分で津波が到達すると予想されている
南海トラフ地震が発生した場合、もっとも早いところでは地震発生からわずか2~3分で津波が到達すると予測されています。とくに高知県や和歌山県の沿岸部では、津波到達までの時間が非常に短い予想です。
内閣府の想定によると、高知県黒潮町では最大34メートル、和歌山県串本町では最大30メートルの津波が予測されているほか、静岡県や三重県、徳島県など太平洋沿岸の広い範囲で10メートル以上の津波が予測されています。
引用:内閣府防災情報のページ「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
地震発生から津波到達までの時間が極めて短いため、「揺れたら逃げる」を基本にした避難計画が各地で立てられています。10mを超える津波に飲み込まれれば、生存はほぼ100%あり得ません。遠くの避難所を目指すより、まずは近くの高い場所に向かうことが命を守るために必要です。
●最大で死者298,000人・全壊焼失棟数2,350,000棟の被害が予想されている
南海トラフ地震による被害想定は非常に深刻です。内閣府の防災情報によると、最悪の場合、死者数は298,000人、全壊・焼失棟数は2,350,000棟と推計されています。
とくに、津波による死者数が多い予想です。地震発生直後の早期避難ができなかった場合、津波による死者数だけで215,000人が発生すると推計されています。しかし、揺れ始めから速やかに避難を開始した場合、死者数は最小で13,000人に減少すると予測されており、迅速な避難の効果は絶大です。
さらに、南海トラフ地震では、強い揺れや液状化、崖崩れなどの地盤災害、そして大規模な火災も懸念されています。また、電気・水道・ガスなどのライフラインが長期間にわたって停止する可能性もあり、日ごろからの備えが欠かせません。
参考:中央防災会議防災対策推実行会議 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について」
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4.津波到達時間の調べ方
ここで気になるのが、実際に自分の住んでいる場所の津波到達時間はどのくらいになるのか、の情報です。ここでは、津波到達時間を調べる3つの方法を紹介します。
●気象庁の津波情報を確認する
気象庁では地震発生時に、テレビやラジオ、インターネットを通じて、最新の津波情報を提供しています。
予想される津波の高さや到達予想時刻が含まれています。実際の津波は予想よりも早く到達したり、高くなったりするリスクがあります。情報をうのみにせず、余裕を持っ手避難しましょう。
●自治体のハザードマップを確認する
各自治体で、以下の情報を地図にまとめた「津波ハザードマップ」を作成・公開している場合があります。
・津波到達時間の目安
・津波の浸水域
・津波の高さ
・避難場所
・避難経路
ハザードマップは、市役所や町役場で入手できるほか、多くの自治体ではWebサイトで公開しています。自分が住んでいる地域や、よく訪れる場所のハザードマップを確認しておきましょう。
●防災アプリを活用する
「Yahoo!防災速報」などの防災アプリでは、地震や津波に関する情報をプッシュ通知で受け取れます。自治体が提供する防災アプリなら、地域に特化した情報を得ることも可能。防災アプリをインストールして設定を確認しておけば、緊急時にも素早く情報を入手できます。
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5.津波から身を守るための避難行動
津波から命を守るためには、迅速かつ適切な避難行動が必須。津波による被害から身を守れる確率を高める、避難行動のポイントは以下の5つです。
・津波注意報・警報が発令されたらすぐに高台へ避難する
・高台への避難が間に合わない場合は3階以上の建物に避難する
・沿岸部や川へは近づかない
・車は使用せず徒歩で移動する
・警報が解除されるまで安全を確保する
とくに「すぐに避難する」「海や川には近づかない」意識が命を救うポイントとなるでしょう。
6.地震や津波に備えて準備しておきたいこと
地震や津波に備えるためには、日頃からの準備が欠かせません。次に紹介する4つの対策をできることから実践して、いざというときに備えましょう。
●近くの高台と避難ルートを確認する
お住まいの地域や、よく行く場所の近くにある高台や避難場所を事前に確認しましょう。海辺に行くときは、その地域の避難場所を調べてから出かけるのがおすすめです。
また、地震の影響で建物が倒壊したり、道路が寸断されたりすることもあり得ます。メインルートが使えない場合の代替ルートも把握しておきましょう。可能なら実際に歩いてみることで、どのくらいの時間で避難できるかも分かります。
●水や食料を備蓄する
災害後は交通網・物流がマヒしてしまい、食料の調達も難しくなる可能性があります。最低3日分、できれば1週間分の水や食料を備蓄しておきましょう。備蓄しておきたい水と食料をまとめました。
・飲料水:1人1日3リットル×日数分
・アルファ米:炊く必要のない主食
・缶詰・レトルト食品:火を使わずに食べられる
・乾パン・クラッカー:長期保存が可能
・栄養補助食品:カロリーメイトなどの補助食品で栄養補給
・お菓子類:ストレス軽減・カロリー補給に役立つ
・離乳食・粉ミルク:乳幼児がいる家庭では必須
定期的に消費期限をチェックし、古くなったものから消費して新しいものと入れ替える「ローリングストック法」での備蓄がおすすめです。常に新鮮な備蓄品を保てます。
●避難用持ち出しバッグを準備する
災害発生時にすぐに持ち出せるよう、家族全員分の必需品をバッグにまとめておくことが大切です。避難用持ち出しバッグに入れておきたいものをまとめました。
・飲料水:重くなりすぎないように1~2リットルほど
・非常食:コンパクトで日持ちするもの
・救急セット:絆創膏、消毒液、常備薬など
・懐中電灯・ヘッドライト:予備電池も忘れず
・携帯ラジオ:情報収集に必須
・モバイルバッテリー:スマートフォンの充電用
・現金:お店が開いたら使えるように小銭も含めて用意
・保険証や免許証のコピー:身分証明になるもの
・マスクと消毒液:避難所での感染症対策として
・防寒シートや雨具:悪天候に備えて
・筆記用具とメモ帳:情報記録用に
定期的にチェックし、電池の消耗や食品の消費期限などを確認して、常に使える状態にしておくことが大切です。家族構成に合わせて、赤ちゃん用品やお年寄りの薬なども追加しましょう。
●非常用電源を備えておく
災害時は停電が発生することが多くあります。情報収集や連絡手段の確保のためにも、スマホを充電できる非常用電源の準備が欠かせません。
最近では、コンパクトで持ち運べる大容量のバッテリー「ポータブル電源」も登場しています。モバイルバッテリーとは違い、AC100V電源(コンセント)を使う家電も動かすことが可能です。冬の災害時に電気毛布で暖を取るなど、モバイルバッテリーにはできない使い方ができます。ソーラーパネルとセットで使えば、普段の電気代の節約にも。一家に1台備えておきましょう。
7.地震や津波が発生した時の非常用電源には「Jackery Solar Generator」がおすすめ
南海トラフ地震では、全国で7,510万件におよぶ大規模停電が発生する予想。しかも、1週間が経過しても40万件~90万件で停電が継続する見込みとなっています。そこで、生命線となる災害時の電源確保を担うのが、ポータブル電源とソーラーパネルのセット「Jackery Solar Generator」です。
【Jackery Solar Genaratorのポイント】
・ソーラーパネルで、何度でもポータブル電源を充電して繰り返し使用可能
・約10年の長寿命で、5年~10年後の大地震でも活躍
・1年放置しても容量の5%しか自然放電せず、普段使わなくても安心
・30dB(深夜のささやき声)の静音設計で避難所でも使用可能
・震度7の地震の衝撃や落下にも耐えられる安全性
普段はソーラーパネルを活用して電気代を安くしたり、キャンプや車中泊に持ち出して使ったりすることも可能。モデルによりますが、電子レンジやケトルのような、家によくある消費電力が大きい家電も動きます。「災害のためだけ」に高い買い物をする心配はありません。いつもの暮らしを便利にしながら、南海トラフ地震をはじめとする災害にしっかりと対策しましょう。
8.地震から津波までの時間に関するよくある質問
地震から津波までの時間に関するよくある質問と、その回答をまとめています。
●地震から津波までの時間は最短で何分後ですか?
最短では地震発生からわずか2~3分で津波が到達することがあります。2024年の能登半島地震では、わずか3分後に津波が到達した地域がありました。
このように津波の到達時間が非常に短いケースが多いため、強い揺れを感じたらすぐに高台へ避難を開始しましょう。津波警報や注意報を待っていると、避難が間に合わないこともあります。
●大きな地震の津波到達時間は平均何分くらいですか?
震源地に近い沿岸部では数分から10分程度、遠い地域では数十分から数時間後に津波の第一波が到達することがあります。最大波は、それから10~30分後となることが多いです。
2011年の東日本大震災では、震源地に近い三陸沿岸の一部地域では地震発生から約30分後に大津波が到達しました。一方、距離がある関東地方の沿岸部では約1時間後、さらに遠い地域ではそれ以上の時間がかかっています。
ただし、これらはあくまで目安であり、実際には最大波がすぐに押し寄せる可能性も。大きな地震があったら、すぐに高台へ逃げてください。
●南海トラフ地震が発生した場合、和歌山県には何分で津波が到達しますか?
南海トラフ地震が発生した場合、和歌山県の沿岸部には3分ほどで高さ1m以上の津波が押し寄せる予想です。その後、地震発生から14分ほどで高さ10mを超える津波が到達する予想となっています。
和歌山県では震度7クラスの強い地震と大津波により、1万人を超える死者と甚大なライフラインへの被害が発生する見込みです。非常用電源としてポータブル電源を備えるなど、できることから始めましょう。
●南海トラフ地震で大阪に津波が到達した場合の被害のシミュレーション結果は?
南海トラフ地震で大阪に津波が到達した場合の被害予想は以下のとおりです。
・早期避難率が低い場合の死亡者数:132.967人
・早期避難率が高い場合の死亡者数:7,882人
・建物の全壊被害数:31,135人
※冬季の18時頃に地震が起きた場合を想定
参考:大阪府南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会「大阪府域の被害想定について (人的被害・建物被害)」
また、朝日新聞が公開している国の有識者会議にもとづくシミュレーションによれば、大阪府には58分~1時間51分ほどで沿岸部各地に津波が到達。津波高は平均4~5mとなる予想です。目安として50分以内に高台へと避難できなければ、命を落とすリスクがあります。
まとめ
地震発生から津波が到達するまでの時間は、もっとも速いケースでは、地震からわずか2〜3分。過去の災害事例から学ぶと、強い揺れを感じたらすぐに高台へ避難を開始するのが確実な身の守り方です。とくに沿岸部では、津波警報や注意報を待たずに避難をはじめましょう。
直近30年以内に発生の可能性が高い「南海トラフ地震」では、大規模な停電をはじめとするライフラインの停止も予想されます。地震や津波で生き残っても、水も電気も食料もなければ生活できません。水や食料の備蓄、避難用持ち出しバッグの用意をはじめるとともに、「Jackery Solar Generator」のような非常用電源も確保しておきましょう。