1.ナマズと地震の関係とは|なぜ地震予知と結びついたのか?

日本では江戸時代から、ナマズは地震と深い関係があると信じられてきました。その背景には、ナマズの特殊な体の構造と、地震前に見られた異常行動の言い伝えがあります。詳しく見てみましょう。
①江戸時代から「ナマズが暴れると地震が起こる」と言われてきた
ナマズと地震の関係が広く知られるようになったのは江戸時代のことです。1855年(安政2年)に発生した安政江戸地震は、マグニチュード6.9の直下型地震で、死者は約1万人、倒壊家屋は1万4,000戸以上という甚大な被害をもたらしました。
この地震の直前にナマズがひどく騒いでいたという記録が『安政見聞誌』などに残されており、人々は「ナマズが暴れたから地震が起きた」と解釈しました。当時は地震のメカニズムが科学的に解明されておらず、地下に住む大きなナマズが暴れることで地震が起こるという考え方が広まったのです。
参考:東京都消防庁「地震と鯰」
②地震の前にナマズが異常行動をとる言い伝えが多い
ナマズは頭部を中心に体の表面に「小孔器」と呼ばれる電気受容器を持っています。小孔器によってナマズは水中の微弱な電位差を感じ取ることができ、その感度は人間やコイの約100万倍ともいわれるほど。たとえるなら、琵琶湖のような広い湖に乾電池を1個投げ込んだとき、そのわずかな電気を数キロメートル先で感知できるほどの能力です。
地震の発生前には地殻変動によって地中に電磁波が発生するとされており、ナマズがこの電磁波を感知して異常行動を起こすのではないかという説があります。夜行性で水底に体をつけて生活しているナマズは、地面のわずかな変化を敏感に察知できる可能性が考えられているのです。
2.ナマズと地震の神話・伝承
ナマズと地震を結びつける考え方は、日本の神話や民間信仰にも深く根付いています。当時の人々の地震への恐れと、それを乗り越えようとする心情を今に伝えるものです。以下で詳しく紹介します。
①鹿島神宮の要石が地下の大ナマズを押さえている
茨城県鹿嶋市に鎮座する鹿島神宮には「要石(かなめいし)」と呼ばれる霊石があります。地上に見えているのは直径約30cm、高さ約7cmのわずかな部分ですが、その本体は地中深くまで続いているとされ、底を見た者はいないといわれています。
この要石について、江戸時代には「地下には地震を起こす大ナマズが住んでおり、鹿島神宮の祭神である武甕槌大神(タケミカヅチノオオカミ)がこの要石で大ナマズの頭を押さえつけているため、大地震が起きない」という伝説が伝えられていました。

なお、千葉県香取市にある香取神宮にも同様の要石があり、こちらは大ナマズの尾を押さえているとされています。
②安政江戸地震後にナマズ絵が大流行した
1855年の安政江戸地震の直後、「鯰絵(なまずえ)」と呼ばれる浮世絵が江戸の町で大流行しました。

鯰絵にはさまざまなバリエーションがありました。
● 鹿島神宮の神様がナマズを懲らしめる「地震除けのお守り」としての絵
● 吉原の遊女たちがナマズを成敗している風刺的な絵
● ナマズが復興景気で儲けた大工たちに小判を与える「世直し」の絵
地震は多くの被害をもたらしましたが、建物の建て替えや復興工事によって大工や左官といった職人たちは高い収入を得ていました。鯰絵には、地震への恐怖を笑いに変えて乗り越えようとする庶民の知恵と、富裕層から貧しい人々へ富が再分配される「世直し」への期待が込められていたと考えられます。
3.ナマズは本当に地震を予知できるのか|科学的研究の結果
昔から言い伝えられてきた「ナマズの地震予知能力」ですが、科学的な研究によってその真偽が検証されてきました。結論から言うと、現時点では明確な関連は認められていません。しかし、研究によってはナマズの異常行動と地震の関係を示唆するデータも報告されています。
①東京都水産試験場の16年間の研究では明確な関連が認められなかった
東京都水産試験場(現・東京都島しょ農林水産総合センター)では、1976年から1992年までの16年間にわたり、ナマズと地震の関係を研究していました。
研究ではプレハブ小屋内に水槽を設置してナマズを飼育し、振動計を水槽内部に設置して24時間連続でナマズの行動を記録しました。
参考:防災科学技術研究所地震予知総合振興会「地震とナマズの異常行動と電磁界変」
1978年から1992年までのナマズの異常行動と、東京都での震度3以上の地震91例のうち、実験が欠測となった4例を除いた87例を分析したところ、地震の10日前以内に明らかな異常行動が見られたのは27例のみ。野球に例えると3割1分の打率に相当します。
最終的には「地震の前兆とナマズの異常行動の関連は、はっきり認められない」と結論づけられ、実験は打ち切られました。
②再現性や観察基準に問題があり科学的根拠は不十分
ナマズの地震予知能力が科学的に認められない理由として、いくつかの問題点が指摘されています。
● 再現性の問題:地震は発生する場所や時期を予測できないため、同じ条件で繰り返し実験することが難しい
● 観察基準の問題:何をもって「異常行動」とするかの明確な基準がなく、研究者によって判断が異なる可能性がある
● 要因の特定が困難:ナマズが反応しているのが地震の前兆現象なのか、水温や気圧の変化、餌の状態など他の環境要因なのかを特定できていない
このように、ナマズの行動と地震を結びつけるには、まだ多くの課題が残されているのです。
③「人工ノイズ」のない環境ならナマズによる地震予知が可能な可能性も指摘
研究者の中には、都市部では電車や電気機器などの「人工ノイズ」が多いため、地震前の電磁波変動をナマズが正確に感知できない可能性を指摘する意見もあります。人工ノイズの少ない環境であれば、ナマズが地震前の電磁波変動をより明確に感知し、予知に役立てられる可能性があるという見方です。
しかし、現時点ではこれらの仮説を裏付ける十分なデータがなく、ナマズだけを使って地震を予知することは現実的ではありません。東海大学海洋研究所が2002年から行った研究でも、「地震発生前にナマズを含めて動物の異常行動は一定の確認ができたものの、動物の異常行動のみを用いて地震の予知はできない」という結論に至っています。
参考:建設通信新聞
4.現代の科学で地震予知は不可能!必要なのは「日頃からの備え」
ナマズによる地震予知は科学的に証明されていませんが、それ以前に、現代の地震学でも地震の発生を正確に予測することはできていません。いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起こるかを事前に特定する技術は、まだ確立されていないのです。
だからこそ、地震はいつでも起こりうるものとして、日頃から備えておく必要があります。ここでは、すぐに始められる5つの地震対策を紹介するので、できることから実践していきましょう。
関連記事:地震予知は本当に可能?今日起きるかもしれない大地震への最低限の備え
①家具を固定して転倒・落下を防ごう
地震による負傷の多くは、家具の転倒や物の落下によって起こります。阪神・淡路大震災では、負傷者の46%が家具の転倒や落下物によるものでした。
参考:内閣府防災情報のページ「できることから始めよう!防災対策 第2回」
家具の固定には、L字金具やつっぱり棒、粘着マットなどを活用しましょう。ひとつではなく、組み合わせて使用すると効果が上がります。とくに以下のような家具は転倒すると大きな被害につながるため、優先的に固定してください。
● 背の高いタンスや本棚
● 冷蔵庫
● テレビ
また、棚の上には重いものを置かない、ガラス戸には飛散防止フィルムを貼るなどの工夫も効果的です。
関連記事:100均でできる!家具転倒防止の簡単DIY|賃貸でも安心の耐震対策
②建物の耐震性を確認しよう
1981年以前に建てられた建物は、現在の耐震基準を満たしていない可能性があります。この年に建築基準法が改正され、より厳しい耐震基準(新耐震基準)が導入されたためです。
古い建物にお住まいの場合は、自治体の耐震診断制度を利用して建物の安全性をチェックしてみてください。多くの自治体では無料または低額で耐震診断を受けられる制度があり、必要に応じて耐震補強工事の補助金を受けられる場合もあります。
関連記事:耐震等級3にする意味はない?本当に地震に強い家の条件を解説
③ハザードマップで自宅周辺のリスクと避難経路を把握しよう
お住まいの地域にどのようなリスクがあるかを事前に把握しておくことも欠かせません。自治体の公式ホームページなどで公開されているハザードマップを確認すると、以下のようなリスクを知ることができます。
● 地震による揺れやすさ
● 液状化の危険度
● 津波や土砂災害
ハザードマップは国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」内にある「重ねるハザードマップ」でも確認できます。自宅から避難所までの経路を複数確認し、家族と共有しておきましょう。
④非常用持ち出し袋を準備しよう

地震発生後はすぐに避難が必要になる場合があります。突然の地震でも慌てないよう、すぐに持ち出せる非常用持ち出し袋を準備しておきましょう。非常用持ち出し袋には以下のようなものを入れておきます。
● 飲料水
● 非常食
● 懐中電灯
● 携帯ラジオ
● モバイルバッテリー
● 救急用品
● 常備薬
● 現金
● 身分証明書
定期的に中身を確認し、食品や電池の期限切れがないか忘れずにチェックしてください。飲料水や非常食は、普段使いしながら使った分を新しいものに入れ替えていく「ローリングストック」の方法で管理するのがおすすめです。
関連記事:地震への備えをしている人は4割以下!大地震に備えて絶対やるべき対策8選
⑤備蓄品を最低3日分用意しよう
大規模な災害が発生すると、支援物資が届くまでに時間がかかることがあります。非常用持ち出し袋のほか、最低でも3日分、できれば1週間分の備蓄を目安に準備しておくと安心です。備蓄品として最低限準備したいものは以下のとおり。
● 飲料水(1人1日3リットル)
● 非常食(アルファ米、缶詰、レトルト食品など)
● カセットコンロとボンベ
● 携帯トイレ
● 生活用水
● 衛生用品
● 非常用電源
よく「地震対策でお風呂の水をためておく」人がいますが、風呂水は衛生上の問題から飲料水としては使えません。雑菌が繁殖しており、飲用すると感染症などのリスクがあります。必ず、飲料水と生活用水は別物と考えて備蓄しましょう。
5.いつ起こるか分からない地震と停電の対策に「Jackeryポータブル電源」
大規模な地震では数日から1週間以上停電が続くこともあり、その間に冷蔵庫の食材が傷んだり、スマホが使えなくなって情報収集ができなくなったりする恐れがあります。そこで停電対策として活躍するのが、持ち運びできるコンセント付きの蓄電池「Jackeryポータブル電源」です。Jackeryポータブル電源を用意しておけば、突然の停電でも安心です。
● モバイルバッテリーの何倍~何十倍もの回数、スマホを充電できる
● 照明をつけて、割れたガラスの破片を踏むことによるケガなどを防止できる
● 電気毛布などの暖房が使えて、真冬の停電でも暖を取りながら過ごせる
● 上位モデルならエアコンも使えて、真夏の熱中症対策も問題ない
● 電子レンジや電気ケトルを使って、停電中も普段どおりの食事ができる
Jackerのポータブル電源は一般社団法人防災安全協会による「防災製品等推奨品」マークを取得しており、性能の高さや使い勝手の良さもお墨付き。フル充電状態での保管の場合、1年間で5%しか電池残量が減らない低自然放電の仕組みも搭載し、停電時だけの使用でも問題ありません。1台備えて、いつ起こるか分からない地震と停電にしっかり対策しておきましょう
6.ナマズと地震に関するよくある質問
ナマズと地震に関するよくある質問と、その回答をまとめました。
①ナマズ以外に地震を予知するといわれている動物はいる?
ナマズ以外にも、地震の前に異常行動を示すといわれている動物は多く報告されています。
● 犬:急に吠える、遠吠えする、落ち着きがなくなる
● 猫:外に出ようとする、鳴き続ける、高い場所へ行こうとする
● カラス:群れをなして空を飛ぶ
● ネズミ:長らく屋根裏などに潜んでいたのに突然いなくなる
● 深海魚:海岸に打ち上げられる
しかし、ナマズと同様に、動物の異常行動と地震との因果関係は科学的には証明されていません。動物の行動変化だけで地震を予知することは現時点では不可能であり、日頃からの備えが必要です。
②緊急地震速報アプリに「なまず」の名前が使われているのはなぜ?
江戸時代から「ナマズが暴れると地震が起こる」という言い伝えがあり、日本人にとってナマズが地震の象徴として定着しているためです。緊急地震速報を受信する機器やアプリには「デジタルなまず」「スーパーなまず」「なまず速報」など、ナマズの名前を使ったものが多くあります。
また、東京都などでは地震発生時に緊急車両を通行させるための「緊急交通路」を示す道路標識に、青い体に黄色いヒレを持つナマズのキャラクターが描かれています。このように、現代においてもナマズは防災や地震のシンボルとして親しまれているのです。
まとめ
ナマズと地震の関係は、江戸時代から続く日本の民間信仰に根ざしています。鹿島神宮の要石伝説や安政江戸地震後のナマズ絵の流行は、地震という避けられない災害に対して、人々がどのように向き合ってきたかを示す文化遺産ともいえるでしょう。
科学的な研究では、ナマズが電気を感じ取る特殊な能力を持っていることは分かっていますが、地震予知に使えるかどうかは証明されていません。東京都水産試験場の16年間の研究でも、はっきりとした関連は認められませんでした。
現代の科学をもってしても地震の発生を正確に予測することはできないため、「いつ地震が起きても対応できる備え」が求められます。家具の固定や耐震対策、非常用持ち出し袋や備蓄品の準備、そして停電に備えたポータブル電源の用意など、できることから始めてみてください。