非常用発電機の設置基準に関わる3つの法令

非常用発電機の設置基準には、以下の3つの法令が関わっています。
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消防法
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建築基準法
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電気事業法
各法令は役割や目的、非常用発電機の設置・管理についても規定が異なります。それぞれの要件を把握しておきましょう。
●消防法|防災設備の電源確保を義務付ける
消防法は、火災発生時の人命安全を確保するための法律であり、以下のような消防用設備の非常電源として設置を定めています。
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屋内消火栓
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スプリンクラー
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非常照明
このような設備を停電時でも機能させるため、建物の用途や規模に応じて消防用設備を設置するよう義務付けています。
延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物では、自家発電設備や蓄電池設備の設置が求められ、設置後は点検と消防署長への報告が必要です。
参考
●建築基準法|建物の安全性確保を義務付ける
建築基準法は、建物全体の構造や設備の安全性を確保するために制定された法律で、避難や防災に関わる以下の建築設備の機能維持を目的としています。
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非常用昇降機
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排煙設備
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非常用照明装置
高さ31mを超える建物には非常用昇降機の設置が義務付けられ、特定の用途や規模の建物では排煙設備や非常用照明装置の設置が必要です。設備を正常に作動させるため、予備電源の設置が求められます。
消防法とは規制の目的が異なりますが、建物の用途や階数によっては非常用発電機の導入が必須となるケースがあります。
参考
●電気事業法|自家用電気工作物の保安を義務付ける
電気事業法は、電気設備の安全な運用と管理を目的とした法律で、出力10kW以上の発電機は「自家用電気工作物」として扱われます。
常用・非常用を問わず、すべての発電機が保安規定に適合した状態で運用されなければなりません。設置者には電気主任技術者の選任と届出が義務付けられています。
また、安全かつ確実に稼働させるため、以下のような点検も必要です。
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点検区分 |
点検内容 |
確認ポイント |
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月次点検 |
外観の確認 |
・本体、配線、接続部に破損や緩みがないか ・燃料漏れや異音・異臭がないか |
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年次点検 |
機能・性能の確認 |
・自動起動装置が正常に作動するか ・絶縁抵抗値が基準を満たしているか |
消防法や建築基準法が「防災」を目的とするのに対し、電気事業法は「電気設備の保安」に焦点を当てています。
【関連記事】停電時に「非常用電源」って本当に必要?
消防法における非常用発電機の設置基準
消防法では、火災時の被害拡大を防ぐため、特定の建物に非常用発電機の設置を義務付けています。ここでは、非常用発電機の設置基準について見てみましょう。
●設置義務のある建物|延床面積1,000㎡以上の特定防火対象物など
消防法では、延床面積1,000㎡以上の特定防火対象物に非常用発電機の設置を義務付けています。特定防火対象物とは、多くの人が出入りする以下のような建物です。
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病院
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老人ホーム
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ホテル
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百貨店
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商業施設
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オフィスビル
これらの施設では、火災発生時にスプリンクラーや消火栓設備が作動するよう、非常用電源の確保が求められます。
ただし、すべての建物に設置義務があるわけではなく、建物の用途や規模によって判断されます。設置要件は消防署の判断が必要となるため、事前に確認しておきましょう。
●必要な容量の目安|消防用設備を一定時間稼働できること
非常用発電機の容量は、消防用設備を適切な時間だけ稼働させられるかが基準です。屋内消火栓設備・スプリンクラー設備などは、30分以上稼働できる性能が必要です。そのうえで、非常照明や火災報知設備を同時に使用する条件で容量を決めます。
消防法施行規則では、定格負荷で60分以上連続運転できる性能が定められています。燃料油についても2時間以上の容量確保が必要です。
実際の容量は、建物に設置された消防用設備の種類や数によって変わるため、専門業者による正確な算定が欠かせません。
参考
●燃料タンクの設置基準|指定数量以上は消防署への許可申請が必要
非常用発電機の燃料として使用される軽油や重油は、消防法上の危険物に該当します。貯蔵量が指定数量を超える場合、危険物貯蔵所としての規制対象となり、消防署への許可申請が必要です。
消防法で定められた危険物ごとの指定数量は、以下のとおりです。
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燃料の種類 |
指定数量 |
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軽油 |
1,000リットル |
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灯油 |
1,000リットル |
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重油 |
2,000リットル |
参考:液体燃料の危険物規制について(その1)|社団法人 日本内燃料発電設備協会
許可を受けるには、タンクの設置場所や構造、保安距離などの基準を満たさなければなりません。また、燃料タンクは水が侵入・浸透しない位置に設け、定期的な点検や燃料の管理も求められます。
●消火器の設置基準|発電機室には消火器の設置が必要
発電機室は燃料や電気設備があるため火災リスクが高く、消火器の設置が義務付けられています。消火器の種類や本数は、消防法施行令や火災予防条例で規定されており、発電機の出力や燃料タンクの容量に応じて決まります。
粉末消火器や二酸化炭素消火器などの適切な種類を選び、すぐに使える場所へ配置してください。
また、消火器には有効期限があり点検と期限の管理が欠かせません。消防検査では設置状況や点検記録が確認されるため、日頃から管理を徹底しておく必要があります。
参考
建築基準法における非常用発電機の設置基準
建築基準法では、建物の安全性確保の観点から特定の用途や規模の建物に予備電源の設置を義務付けています。設置しなければならない建物の条件と、非常用発電機が必要となる設備を解説します。
●設置義務のある建物|不特定多数が利用する一定規模以上の建物
建築基準法では、建物の用途や規模などによって非常用発電機の設置義務があり、主な設置対象は以下のとおりです。
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高さ31mを超える建築物(非常用エレベーター用)
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排煙設備が必要な特殊建築物(延床500㎡超等)
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非常用照明が必要な建築物(劇場・百貨店・ホテルなど)
特殊建築物とは、病院・劇場・百貨店など、さまざまな人が利用する建物を指します。高層建築物や商業施設は設置対象になりやすく、新築時だけでなく大規模な改修時にも設置義務が発生する場合があります。
参考
●非常用エレベーターや排煙設備の電源として設置が必要
建築基準法が予備電源を義務付ける目的は、火災時の避難や消防活動を支える設備への電力供給です。非常用エレベーターは高層建築物からの避難や消防隊の活動に使われ、排煙設備は火災時の煙を排出して避難経路を確保します。
停電時にこれらの設備が停止すると、煙が建物内に充満して避難がむずかしくなり、人命に関わる危険が高まります。非常用照明装置も暗いところでの避難を可能にするため、予備電源による稼働が欠かせません。
このように非常用発電機は、建物全体の安全性を支える生命線として機能しています。
非常用発電機の設置場所の要件
非常用発電機は設置場所についての要件が定められています。設置場所となる3つのポイントを確認しましょう。
●離隔距離|建物や敷地境界線から一定の距離を確保する
非常用発電機の設置には、火災時の延焼防止や騒音対策から、建物や敷地境界線から一定の離隔距離を確保する必要があります。離隔距離で確認すべき点は以下のとおりです。
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屋外に設置する場合は、隣接する建物への影響を考慮した保安距離
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発電機の振動や運転音が周辺住民に与える影響にも配慮
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燃料タンクを併設する場合は、危険物施設としての離隔距離基準が適用
距離の基準は、建物の構造や用途、発電機の出力によって異なり、自治体の火災予防条例や消防署の判断に従う必要があります。
●換気・排気設備|排気ガスや熱を適切に処理できる
ディーゼル発電機などの内燃機関を使用する非常用発電機は、運転時に排気ガスや熱が発生することから、換気・排気設備の設置が必須です。
室内に非常用発電機を設置する場合は、安全性と作業環境を確保するため、以下の点に注意してください。
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一酸化炭素などの有害ガスが室内に滞留しないよう、換気計画を立てる
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排気ダクトを設置し、排気ガスを確実に屋外へ排出する経路を確保する
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排気ガスが建物内へ逆流・流入しない構造にする
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発電機の運転による室温上昇を考慮し、熱がこもらない設計にする
火災予防条例では換気性能について基準が定められており、無負荷運転時などに換気設備が正しく機能するか点検が求められます。
●防火区画|発電機室は耐火構造で区画する必要がある
発電機室は火災発生リスクがあるため、建築基準法と消防法の双方で防火区画の設置が義務付けられています。不燃材料で造られた壁・柱・床・天井で区画し、窓や出入口には防火戸を設けなければなりません。
耐火構造による区画は、万が一発電機室で火災が発生した場合でも、他の部屋への延焼を防ぎ、建物全体の安全性を確保するために欠かせないポイントです。
屋外設置やキュービクル式の場合は一部要件が除外されますが、屋内設置では厳格な防火基準が適用されます。
参考
非常用電源は「ソーラーパネル×ポータブル電源」の選択肢も

消防法や建築基準法で義務付けられた非常用発電機だけでなく、BCP対策や任意の備えとしてポータブル電源とソーラーパネルをセットにしたソーラー発電機の導入も検討する価値があります。
ポータブル電源とは、持ち運び可能な大容量バッテリーで、コンセントのない場所でも家電へ給電できる便利なアイテムです。活用例は以下のとおりです。
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老人ホーム:医療機器や介護設備への補助電源
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ホテル:客室や共用部の照明・通信機器の維持に活用
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オフィスビル:非常時におけるPCやスマホの充電確保
非常用発電機が起動するまでの時間や燃料切れ時の予備電源としても機能し、災害時の事業継続性を高められます。
「Jackery(ジャクリ)」のポータブル電源は、持ち運びやすさを重視した小型モデルもあり、避難時の携行にも適しています。また、10年以上長持ちする耐久性も魅力です。ソーラーパネルと組み合わせれば、停電が長引いた場合でも太陽光発電機でしっかり電源を確保できます。
非常用発電機とあわせてJackeryのポータブル電源を導入し、災害時の電源確保を強化しましょう。
非常用発電機の設置基準に関するよくある質問
非常用発電機の設置基準について、よくある質問とその回答をまとめました。
●マンション・共同住宅の非常用発電機の設置基準は?
一般的な共同住宅では、非常用発電機の設置の必要がないケースが多いです。ただし、高さ31mを超える高層マンションでは、建築基準法により非常用エレベーターの設置が義務付けられるため、非常用発電機が必要になります。
また「延床面積1,000㎡以上の共同住宅」で消防用設備の設置が必要な場合、消防法にもとづく非常電源の設置対象となる可能性があります。
新築や大規模な改修時には、設計の段階で消防署や建築指導課に確認してください。
●病院の非常用発電機に求められる稼働時間は?
病院の非常用発電機に求められる稼働時間は、施設の種類や電源の用途によって以下のように異なります。
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区分 |
用途・対象 |
要件・基準 |
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災害拠点病院 |
災害時の医療提供拠点 |
燃料備蓄は72時間(3日間)以上が指定要件 |
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一般非常電源(JIS T 1022) |
医療施設の非常用電源 |
連続稼働時間10時間以上 |
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無停電非常電源 |
人工呼吸器などの生命維持装置 |
停電時も電力を途切れさせないことが前提 |
参考
JIST1022:2018 病院電気設備の安全基準|日本産業規格の簡易閲覧
医療機関では、人工呼吸器や透析装置などの生命維持装置が稼働し続ける必要があるため、他の建物よりも長時間の運転が求められます。
災害時、医療提供の体制を維持するには、燃料備蓄と発電容量の確保が欠かせません。
●非常用発電機の設置基準に違反するとどうなる?
設置基準に違反した場合、消防署や建築指導課から是正指導を受ける可能性があります。
消防や行政の指導に従わず、是正をおこなわないまま事故が発生した場合、法令上の措置や責任を問われる可能性があります。想定されるリスクは以下のとおりです。
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想定されるリスク |
内容 |
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法令違反による措置 |
・消防法や建築基準法にもとづき、使用停止命令や罰則の対象となる場合がある ・1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
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事故発生時の責任 |
・火災などの事故時に非常用発電機が正常に作動せず被害が拡大した場合 ・建物所有者や管理者が法的責任を問われる ・1年以下の懲役または100万円以下の罰金(事故の規模や状況によって、さらに重い刑事責任) |
参考
法令遵守は人命を守るために欠かせない要件であり、定期的な点検と適切な維持管理が求められます。
【関連記事】家庭用非常用電源おすすめ5選!停電中も冷蔵庫やエアコンを動かしたい人必見
まとめ
非常用発電機の設置基準は、消防法・建築基準法・電気事業法の3つの法令で定められています。建物の用途や規模によっては設置が義務付けられており、容量や設置場所などの基準の確認が必要です。
法令遵守は人命を守るために欠かせず、違反すると是正指導や罰則の対象となる可能性があります。
法定の非常用発電機に加え、BCP対策として「Jackery(ジャクリ)」のポータブル電源を導入すれば、災害時の電源確保をさらに強化できます。
専門業者や消防署のアドバイスを受けながら、計画的に対策を整えておきましょう。